全米で議論沸騰!【R・クレメンス50歳で現役復帰】の舞台裏
1980年から2000年中盤まで、メジャーを代表する剛腕投手だったロジャー・クレメンス(50)が、昨日5年ぶりの現役復帰を果たした。
その舞台は、数あるアメリカ独立リーグの中でも、メジャー経験者が数多く活躍しているアトランティック・リーグの「シュガーランド・スキーターズ」。この挑戦には「熱いぜ、50オヤジ!」「我らのヒーロー!」などクレメンスへの声援が聞こえる半面、同じくらい(いや、それ以上?)の「ステロイド・ボーイズ」「インチキ男!」といったバッシングが挙がっている。
2004年オフには、エージェント(代理人)と共に自ら来日し、球界再編騒動のなか参入を目指していた「仙台ライブドア・フェニックス」と極秘裏に交渉を行い、新球団誕生の暁には新チームの開幕投手を務める仰天プランも企てていたロジャー・クレメンス。一体どんな男なのだろうか。
◆息子にビーンボール。恐るべき”投手としての本能”
投手としてメジャー通算354勝。ワールドシリーズ制覇2度を含め、あらゆるタイトルを総なめにしたクレメンスの最も強い武器は“投手としての本能”と言われている。
調整を兼ねた春のトレーニング中、マイナーリーガーの息子にホームランをかっ飛ばされると、次の打席では息子相手にビーンボールを投げた(目撃者多数あり)武勇伝や、別の息子が登板した試合ではバックネット裏から観戦中、審判の判定に激高して観客席のクレメンスが退場を喰らった実話(こちらも証言者多数)など、彼の“投手としての本能”にまつわるエピソードは際限ない。
そんなクレメンスが今、最も強く欲しているのが「野球殿堂入り(Hall of Fame:以下HOF)」と言われている。
HOFに入るためのゴールデンルートは、現役引退から5年以上を経過した選手を対象とした、全米野球記者協会の記者投票で特定数の獲得が最も一般的だ。現時点でのクレメンスのメジャー引退年は2007年、つまり来年2013年は、クレメンスの現役引退から5年の該当年なのだ。
さらに来年は、通算本塁打歴代1位(762本)のバリー・ボンズ、609本塁打のサミー・ソーサら「ドーピング疑惑者」らが揃って投票対象となる「薬物投票のビックイヤー」であり、現時点ではクレメンスを含めた3人全員が落選する公算が極めて高い、という評判だ。
しかし「もし」、クレメンスがメジャー復帰を果たせば、それは「殿堂入りへの時間稼ぎ」という大きな利点となる。独立リーグとは言え、自分の息子と同世代の若きアスリートを相手にある程度の投球を見せることが出来れば、彼の故郷であり、現在メジャー最低勝率のヒューストン・アストロズが、シーズン終盤の客寄せパンダとしてクレメンスと契約するのでは? という憶測もある。事実、球団オーナーのジム・クレイン氏も「(交渉の扉は)空いている」と、このニュースを否定していない。
仮にクレメンスがメジャーに復帰するとなれば、彼の現役最終年は2012年となり、HOFの投票年次は2018年まで先送りされることとなる。この5年間の先送りが、大変重要な意味を持つこととなる。クレメンスの現役復帰の舞台裏では、HOF入りへの時計を遅らせる行為か? というストーリーが見え隠れしている。これがアメリカ球界で今、大きなウワサとなっているのだ。
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<取材・文/NANO編集部>
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