SNSでのポジティブすぎる発言が痛い
希望、勇気、信じていれば、一人じゃない、歩き出そう――年末年始の歌番組を見て、今さらながらJ-POPの歌詞のポジティブさにめまいがした人も多いのではないだろうか。芸人のマキタスポーツが分析した「ヒット曲の法則」によると、歌詞では「翼・扉・キセキ・桜」の4つを入れることがヒットの条件だというが……。『ポジティブ病の国、アメリカ』(バーバラ・エーレンライク著/河出書房新社 、2010年)という本もあったが、日本も同じ病にかかっているのだろうか?
週刊SPA!1/8発売号「『ポジティブ』という病」では、その兆候を取材したのだが、多く聞かれたのが「SNSでのポジティブメッセージが痛い」という声。いくつか紹介すると――。
「高校時代の親友が、ツイッターで『今日も一日笑顔で』と決まり文句のようにつぶやいている。最初は何も感じなかったが、何回か見ていると、無理してるのでは?と思ってしまう」(28歳・女)
「嫌なことがあっても、ブログやSNSでは良かったことばかりを書いていた友人は、逆に自分を追いつめてウツになってしまった。もっと早く本当のことに気づいてあげられれば…と思った」(39歳・男)
「SNSで『久々に号泣。きっとこれは強くなるために必要な試練なんだろうな。この経験や実感は仕事に生かせるはず。明日からまた出直そう』とか書いちゃう女子。こちらとしては、『声かけてあげたほうがいいのかな』とか気を使ってしまう」(27歳・男)
「SNSで『成幸しましょう』とか『人生繁盛』とか騒いでる人たちを見かけるが、何かの勧誘の場合もけっこう多い」(37歳・男)
「フェイスブックでサークルのページを開設しているが、ある女性メンバーの書き込みがアツい。こちらが投稿するごとに、顔文字を多用したハイテンション&ポジティブコメントを付けてくれる。最初はありがたいと思ってレスを付けていたが、だんだん疲れてきて……。その女性がイベントに来たとき、ハイテンションでワインを飲み過ぎてヒートアップし、最後はグデングデンになって介抱される始末。あのテンションの高さは異常、というか浮き沈みが激しそうで怖い」(32歳・女)
「どんな投稿にもすかさず『いいね!』を押してくれる女友達がいる。しかも400人の友だちすべてに、そうしているらしい。もはや強迫観念なのではないかと思ってしまう」(33歳・女)
「ポジティブ」といえば、2~3年前の「カツマー現象」的な上昇志向かと思えば、集まった例はどこか痛々しいカラ元気のようなものが多かった。精神科医の香山リカさんは、「ポジティブ」の質が変わってきた、と指摘する。香山さんと言えば、著書『しがみつかない生き方』(2009年)でカツマー現象=上昇志向ブームに一石を投じたが、「あの頃は、まだ余裕があったように思う」と言う。
当時と比べて、経済も雇用も社会保障も政治もジリ貧化が進んでいる。「そして今、『自助』『自立』を強調する自民党政権となった。もう、『ポジティブシンキング』や『成長』という言葉が、前向きな意味ではなく、頑張る以外に道がないといった、退路を断たれた切羽詰まった方法論になった気がします」(香山さん)。
上を目指すのでなく、堕ちないための、必死のポジティブさなのだろうか……。さまざまなポジティブ事例や、香山リカさん、宇野常寛さんらの分析は、週刊SPA!1/8発売号をご覧いただきたい。<文/週刊SPA!編集部>
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『ポジティブ病の国、アメリカ』 「プラス思考」ってそんなにいいもの? |
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