「立ちションできへんくなる」国民栄誉賞を辞退した、世界の福本伝説
安倍晋三内閣はプロ野球巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏(77歳)と、巨人軍、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(38歳)の2人に国民栄誉賞を贈る方針を決めたという。
受賞者が発表になる度に議論を呼ぶこの賞はもともと、1977年、メジャー記録を抜き、本塁打の世界記録「756本」を達成した王貞治氏(当時37歳)を称えるために、当時の福田赳夫内閣が創設したもの。現在までに20個人1団体に授与され、そのうちスポーツ選手が8回授賞。野球界では、1987年に連続出場・世界新記録を達成した元広島カープの鉄人・衣笠祥雄氏(当時40歳)が授賞している。
この名誉ある賞、実は野球界では2人が辞退を申し出ている。ひとりはイチロー。2001年、メジャーリーグで日本人選手史上初となる首位打者を獲得したことにより、小泉純一郎内閣から授与を打診されたが「まだ現役で発展途上の選手なので、もし賞をいただけるのなら現役を引退した時にいただきたい」と固辞。2004年もMLBのシーズン最多安打を更新したことで再度打診されたが、固辞した。
もうひとりは、「世界の盗塁王」福本豊氏(当時35歳)。1983年に当時の世界記録となる939盗塁を達成し、中曽根康弘内閣から打診されたが、「呑み屋に行けなくなる」とのいささか不思議な理由で固辞をしていた。しかしこの「呑み屋に~」発言、実は、全国向けにニュアンスが変えられたもので、本当は「そんなんもろたら立ちションもできんようになる」と発言していたという。
「世界の盗塁王」福本氏の発言の奔放さはこれだけではない。
社会人野球からドラフト指名された翌日、電車の中でスポーツ紙を読む同僚に「なんかおもろいこと載ってまっか」と聞いて、「オモロイってお前、阪急から指名されとるやんけ」と指摘され、初めて指名に気づいたという伝説を持つ。
現役時代、当時の広島のスピードスター・高橋慶彦氏がオールスターゲームで福本氏に盗塁術を聞いたところ「そんなん気合や!」と答えたことも有名だ。
現役引退後は解説者として、主に阪神戦を担当。解説でも豪快な発言で人気なのだ。
アナウンサーから盗塁成功の秘訣を聞かれ「まず塁に出ることやね」と発言。フェンス際で失速した打球に「何が足りなかったんでしょう?」と問われると「距離ちゃう?」。
投手戦でゼロが並んだスコアボードを「タコ焼きみたいやね」と評し、その後1点が入ると「爪楊枝がついたな!」とオチをつけるなど、在阪の阪神ファンの間では「居酒屋解説」呼ばれるほどなのだ。
そんな福本氏、松井秀喜氏との因縁も。「松井選手は左投手も苦にしないですね」と問うアナウンサーに「そや、松井のサインボール頼まれとってん!」と発言、アナウンサーを絶句させている。
国民栄誉賞は辞退した氏だが、なぜか大阪府知事からの賞は授賞しているそう。「日本の英雄」より、「大阪の人気者」を選んだ、氏の偉大さは大いに語り継がれるべきだろう。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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