更新日:2013年09月17日 11:35
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最初で最後!キトラ古墳一般公開に突撃リポート

箸墓古墳の研究者立ち入り、百舌鳥古墳群の世界遺産登録と、何かと話題の多い古墳業界。そして8月に行われた“最初で最後”の「キトラ古墳」石室一般公開に愛好者たちが殺到。新たな古墳愛好者たちの実像に迫る。 ◆最初で最後!キトラ古墳一般公開に突撃リポート!  8月18~25日、「キトラ古墳石室」の一般公開が行われた。公開後は埋め戻して史跡公園となるため(’16年度に公開予定)、実際の石室を見られるのは今回が「最初で最後」となる。新聞などでそのことが伝えられると、多くの古墳愛好者が応募した。
古墳

キトラ古墳と高松塚古墳の壁画が展示されている修理作業室へ向かう。この時点ですでに大コーフン!

「3600人の枠に、約1万6000人からの応募が寄せられました」(文化庁・宇田川滋正さん)  我々取材班は、その貴重な石室公開ツアーに同行させてもらった。  集合場所である「飛鳥歴史公園」(奈良県高市郡)から、一組十数人に分けられた班ごとに移動する。まずは「事前ガイダンス」をセミナールームにて受ける。 「実物を見てもらう前に知識を持っていただきたく、ガイダンスの時間を設けました」(宇田川さん)  内容は高松塚とキトラの歴史と保存について。一般に高松塚の壁画のカビはかつて調査隊が持ち込んだ雑菌が原因だと言われているが、そのほかにも虫が入り込んだり、地震で亀裂が生じたりといった複合的な要因があるようだ。ガイダンス後、「修理作業室見学」へ。高松塚古墳壁画(青龍・玄武・西壁女子群像)と並んで、キトラ古墳壁画の朱雀と青龍も展示されている。  壁画は思ったよりも小さくて色も薄く、参加者たちはおもむろにオペラグラスを取り出して観察。いい年をしたオッサンたちが、ガラスにはりついて食い入るように眺めている。文化庁の担当者たちは、それをやさしく見守っている。「これ、この後どうなるの?」「被葬者の特定は進んでいるの?」「石室をつくった後に壁画を描いたの?」。矢継ぎ早に質問が浴びせられるが、担当者もどこか嬉しそうだ。作業室は温度21度、湿度55%。この環境が、最もカビの生えない環境なのだという。そのうち、室内にタイマー音が鳴り響いた。制限時間はわずか10分。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=503702  そしていよいよバスでキトラ古墳へと移動し、「最初で最後」の石室公開に臨むことになる。石室に直結した建物の中に入ると、内部は3つの部屋に区分けされており、外気がなるべく入らないように管理されている。この日の石室内は、温度16度・湿度97%で維持されているという。我々が入った見学用の部屋も16度に保たれている。参加者たちは小さなガラス窓を譲り合いながら、1300年前の石室との対面を楽しんだ。  参加してみて驚いたのが、30~40代の女性が多いということ。午前中は年配の男性が多かったが、正午を過ぎると女性率が8~9割と急増。全部女性という組もある。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=503704
古墳

いよいよキトラの石室へ。意外にも女性率が高く、この班は全員が女性だった

「北海道旅行をキャンセルして来ました! 1300年前の石工の技術が見られて感動。埋葬されていた40~60代の男性って誰なんだろう?と想像するのも楽しい」(島田理恵さん・34歳・千葉県) 「抽選に外れたんですが、ネットで同行者募集を見つけて参加しました。ガラス越しで、同じ空気を感じられないのは残念でしたが、『一生見られないものを直に見られる』という感動は格別でした」(坂田薫子さん・30歳・東京都) ⇒【写真】公開された「石室」はコチラ
https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=506667
 古墳愛好者らが大満足したこの一般公開の陰にあるのは、主催した文化庁のホスピタリティの高さだ。猛暑の中、受け付けを済ませれば冷えたお茶が用意してあり、送迎車には全員分の傘を完備。キトラ古墳へ向かう送迎車が出るたびに関係者が深くお辞儀。これはキトラ古墳から戻るときも一緒だ。係員たちは参加者に「ありがとうございます」と一礼する。 「時間をとって見に来ていただいているのですから、できるだけ満足して帰っていただきたい。本当は応募したすべての人に見ていただきたかったです」(宇田川さん)  それもそのはず。宇田川さんは、都内での古墳好きイベント「古墳にこーふんナイト」(http://www.ustream.tv/recorded/32944011/)に参加したこともあるという。当日、宇田川さんとともに対応してくれた文化庁職員の林さんは、大学で古墳を学んでいたとのこと。そこには、古墳愛にあふれる人々の幸せな空間が広がっていたのだ。 【キトラ古墳とは】 7世紀末~8世紀初め頃に造られたと見られる円墳。天武天皇の皇子もしくは側近の高官の古墳である可能性が高い。’83年に石室内の彩色壁画に玄武が発見されて注目を集める。’00年に国指定史跡に指定され、後に特別史跡に指定された。墳丘整備に伴い、今年度中に石室を埋め戻し史跡公園となる予定。 ●古墳研究界の重鎮、大塚初重名誉教授が語る「古墳の魅力」はコチラ
⇒https://nikkan-spa.jp/503030 ― [古墳ブーム元年]大検証【1】 ―
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