更新日:2013年11月10日 11:36
仕事

保険営業の「今、解約すると損します」は本当か?

次から次へと発覚し続けている食品偽装やメニュー誤表示問題。中型のエビを“車エビ”と表示していたというホテル・旅館、飲食業界。だが、それ以外の業界にも偽装とまではいかずとも客に対しての「建前」と「本音」が存在している。日常生活のなかで否応なく接する営業マン。彼らの「建前」を駆使する営業トークは我々の脅威なのだ。カモにされないために必携となる、“敵”の手の内を業界関係者がここに明かす! 生命保険<生命保険> ※建前指数…現場での使用頻度の高さを営業マンの証言から編集部が算出  厳しいノルマやフルコミッション(完全歩合制)が珍しくない生命保険業界の営業。数十年間の支払いが続き、総額は数百万円超と極めて高額になる生命保険の営業トークの巧みさや執拗さは、あらゆる営業のなかでも一、二を争う。 ◆【表】満期金が約束されているので安心です ◆【裏】手数料が高くてとても自分は買わないけど(建前指数76)  満期の際にはまとまったお金が受け取れる貯蓄保険。投資とは違って、満期金の額面が約束される安心感から思わず貯蓄保険を選ぶ人も多い。しかし、そこには落とし穴が。 「貯蓄保険に保険会社の人が入りたがったのは’96 年春くらいまで。投信などで運用する保険も手数料が高いのでダメ。保険は保障を安く買うためのもの。掛け捨てが基本です」(保険コンサルタント・後田亨氏)と満期金狙いで割高な貯蓄保険に加入しては、営業マンの思う壺だ。 ◆【表】リスクが高い病気なので保険で備えましょう ◆【裏】リスクにしっかり備えるといくらあっても足りない(建前指数84) 「安い料金で大きな保障があるのは、宝くじのように、大金が支払われる確率が低いから。病気にかかる確率が高いからと勧誘される保険では、保険金支払い確率をその分高く見込んで価格設定されるので、リーズナブルな買い物にはならないはずです」  支払いリスクが高い人は引き受けたくないのは偽らざる本音であり、同時に「明日、大きな病気になったら加入できない」と過度に不安を煽り、早期の加入を狙ってくる。 ◆【表】若くて健康でも医療保険だけは入ったほうが安心ですよ ◆【裏】まあ、健康保険だけでもだいたいカバーされますが(建前指数92) 「医療保険は人気商品のひとつですが、健康保険に加入している人なら、健康保険でカバーされることも多いです」(32歳・外資系保険外交員)とのことで、保険をよく知る保険会社の人自身も、実は医療保険には加入していないケースが多いという。 ◆【表】若いうちから入ると保険料がお得です ◆【裏】1回の負担額が減るのでお得に見えるでしょ?(建前指数73) 「若いうちから払えば1回に支払う負担は減りますが、その分早くから料金負担が始まるわけですし、払込年数によってもトータル支払金額は変わるものなのでどっちがお得か単純に比較できません」 ◆【表】一生涯、私はあなたの人生をサポートします ◆【裏】歩合制の個人事業主なのでぶっちゃけ一生はムリです(建前指数75) 「保険外交員の大半が歩合制の契約社員だし、ノルマもキツいので転職も多い。だから、一生涯同じお客と付き合うケースは非常に少ない」(38歳・大手保険外交員)。  営業マンとの付き合いは一生ではなく一瞬と心得るべし。 ◆【表】今、解約すると損します ◆【裏】今、解約されるとこちらが困ります(建前指数82) 「確かに貯蓄型の場合、満期前の早い段階で解約してしまうと、返戻金が払込総額を下回り、大きく損してしまうケースが多いのは事実です。ただし、このとき心配しているのはお客さんのことではなくお客をコントロールしきれなかった自分の身」とのことなので親切心ではない。商魂逞しい輩はここで新たな保険を勧誘してくるケースもある。  そのほかにも…… ◆【表】日本人がこの病気になるリスクが高いので、備えたほうがいいですよ ◆【裏】本当にこの病気の患者数が多かったら、商売は上がったりですけどね(建前指数68) ◆【表】今、これが一番売れていて、みなさん加入しています ◆【裏】利益率が高いので猛プッシュしています(建前指数83) ◆【表】あなたのためだけのオーダーメイドプランを作ります ◆【裏】複雑にしたほうが見積もりを高く出せてオイシイです(建前指数81) ◆【表】無料でいくらでも相談に応じます ◆【裏】相談じゃなくて営業です(建前指数90) ◆【表】万が一の際、残されたご家族も安心です ◆【裏】家族をダシにすれば、さすがに入るよな?(建前指数93) 【後田 亨氏】 日本生命乗り合い代理店を経て、現在は保険コンサルタント。著書に『生命保険の「罠」』、『生命保険のウラ側』など多数 イラスト/西アズナブル ― 営業トークの裏側を暴露する【1】 ―
生命保険のウラ側

業界を知りぬいた著者がカラクリを明かしたうえで、本当に必要な保険のかけ方を指南する

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