開催が危うい!? 須藤元気の“リアル天下一武道会”に格闘技ファンが注目
天下一武道会。それは名作『ドラゴンボール』に登場する武道大会である。亀仙人がジャッキー・チュンに扮し、愛弟子・孫悟空の躍進を阻んだり、悟空とピッコロの戦いは会場どころか町まで破壊したり……物語の面白さはもちろん、その世界観もまた多くの読者を魅了した。
そんな天下一武道会の現代版とも呼ばれる、通称「リアル天下一武道会」が昨年8月に都内で開催され、話題になったことをご存知だろうか?
それは「変幻自在のトリックスター」として一大格闘技ブームを支えた須藤元気がプロデュースをする柔術大会「一騎討」のことである。
格闘家引退後もダンスパフォーマンスグループ「WORLD ORDER」で人気を博し、著書を出せばベストセラー、母校・拓殖大学のレスリング部監督を務めれば、最優秀監督賞を何度も受賞するなど、まさに“天才”の呼び名をほしいままにしている須藤。そんな彼が立ち上げた柔術大会「一騎討」には、どうすれば「柔術」が世間に注目されるのかを逆算して考えたユニークな仕掛けや見せ方が満載なのだ。
◆仕掛けいっぱいの柔術大会
まだまだマイナースポーツの域を出ない柔術だが、「グレイシー柔術」の呼び名で認知している中高年層は多いことだろう。
日本発祥の武道だが、ある日本人柔道家がブラジルに競技を伝えた後、現地で発展。今や「ブラジリアン柔術」として世界中に広がり、“身体を使ったチェス”とも呼ばれる頭とカラダを使った全身運動としてビジネスマンにも人気を博し、あのGoogleが福利厚生にも採用しているほど。日本の柔術人口も増えており、武道が持つ礼節や強い心が身に付くとあって、子供の習い事としての人気も増えているのだ。
それでも、まだまだ一般的な認知度が決して高いとは言えない柔術を、須藤は斬新な発想でプロデュースする。そこには高い認知を得ようとするばかりか、日本が誇る“武道コンテンツ”として世界にアピールしたい考えもあるようだ。
◆「和」に徹底的にこだわったエンターテインメント
まず「そう来たか!」と思わずにはいられないのが、本物のお寺を試合会場にしている点だ。足立区の善立寺に特設試合場を用意。試合前には住職による祈祷が行われ、選手はお寺の本堂から階段を下りて入場、試合中は三味線が流れるなど「和」に徹底的にこだわったエンターテインメントとして大会を催す。
またルールの面でも、本来のブラジリアン柔術が階級別だったりポイント制であることに対し「一騎討」は全ての試合が体重無差別級で行われ、一本決着を重視。白か黒、咲くか散るかといった単純明快な勝負にこだわる日本の武士道を意識した戦いをその気概としている。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=822960
だが、5月17日(日)に第2回大会を予定している「一騎討」には開催資金の問題がつきまとう。
◆クラウドファウンディングを利用して大会資金を捻出
まだ2回目ということもあり、大きなスポンサーがついているわけでもなく、現在は個人に向けインターネット上で資金を募集する、いわゆる「クラウドファンディング」を利用し資金の援助を呼びかけている。
ひとたび大会を軌道に乗せれば、それこそ世界的な注目コンテンツになることは間違いなさそうだが、当然、資金募集の締め切りまでに目標金額が集まらなければ大会自体は中止になってしまう。
しかし、このような開催手段にも須藤の思惑がうかがえる。一時的かつ、溢れんばかりの情報が行き交う昨今、クラウドファンディングという手法をとることで、ファンやユーザの注目を維持することにもなる。
現在は残り1か月を切り、70%の達成度とまだまだ安泰と呼べるわけではないが、日々資金の集まり具合を気にしているファンやユーザは多いだろう。記者も最近は1日1回はサイトをチェックしてしまう。
他人に大会の開催を「自分事化」して貰い、一緒にイベントを作りながら、世界的認知を狙う。須藤らしい考え抜かれた取り組みと言えるのかもしれないが、何よりこの「一騎討」が出色なのは、前例なき大会フォーマットだけではない点だろう。
◆一線級の強者が出場
「リアル天下一武道会」と呼ばれているだけあって、出場している柔術家は一線級の強者ばかり。一般的知名度こそ低いが、Jリーグで言えば遠藤保仁、大久保嘉人。プロ野球で言えば大谷翔平、前田健太と言える柔術界を代表する実力者達が無差別級トーナメントで頂を争った。加えて第二回大会では、サンボの日本王者や総合格闘技のパンクラスで活躍した元王者や元PRIDE戦士も出場する。
まさに柔術、柔道、サンボ、総合格闘技による異種格闘技戦であり、「組技の日本一決定戦」と言えるだけのラインナップなのだ。
ハードもソフト抜かりがない「一騎討」だが、前述した通り、大会は一般のお寺の境内で行われるため、入場者は制限されるという。
優先して観るためには、1万円から参加できる資金援助をするのが手っ取り早そうだが、支援をすることで単なる観戦者とは違った愛着が大会に生まれることも確か。いろんな意味で新しい日本発の武道イベントがブレイク寸前の状態なのだ。
<大会公式サイト>
http://ikkiuchi.com/
<クラウドファウンディング>
https://readyfor.jp/projects/ikkiuchi
<Youtube動画>
http://www.youtube.com/watch?v=SYvS7WngnfY
取材・文/日刊SPA!取材班 写真提供/一騎打実行委員会
取材・文/日刊SPA!取材班 写真提供/一騎打実行委員会
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