方言使って出入り禁止! 北九州サポーターに元プロ野球応援団員が同情
今年のサッカー、JリーグもJ1ではサンフレッチェ広島の年間優勝、J2では大宮が一年で返り咲きを果たした。まだまだJ1、J2共にプレーオフが残されており、ファンは最後まで目が離せないでいる。
そんな熱い戦いの裏で、少々異なる意味で“熱い戦い”があったことを、サッカーファンは忘れてはならないだろう。
⇒【動画】コッソリ変更後 http://www.youtube.com/watch?v=94GcHMoMCl8&feature=youtu.be
28日…クラブとブリゲイドが協議(4回目)。この協議において、近日中の「ぶちくらせ」の禁止が示唆された。当団体だけではなく、第3者の意見を聞く場の開催を要望するも、受け入れられなかった 30日…「ぶちくらせ」の使用を11/1のホーム・京都サンガF.C.戦以降禁止する旨が、クラブオフィシャルサイトにて通達される 11月1日…ホーム・京都サンガF.C.戦にて、ブリゲイドは、通常通りに「ぶちくらせ」を用いたチャントを使用し、「ぶちくらせ」の記載のある横断幕を掲示した。また、ブリゲイド以外でも、「ぶちくらせ」の記載のあるゲートフラッグや旗を掲げるサポーターも数名いた 4日…ブリゲイド以外のサポーターから、ブリゲイド以外のサポーターの意見を直接聞く場の開催をクラブにメールで依頼するも、受け入れられなかった。北九州市の北橋市長は、定例記者会見にて以下の発言を行った。 「(クラブ側の掲示禁止の)取り決めは自分としては納得している」 「『ぶちくらす』という言葉は、聞き慣れている人にはともかく、子どもや市外から来たサッカーファンにとってはギョッとさせられる言葉だ」 5日…ホーム京都戦での「ぶちくらせ」の使用に基づき、当該チャントの先導、及び旗を使用した計14名に対する処分が、各人に通達された 7日…念書を拒否したサポーター14人が処分保留となり、ギラヴァンツのホーム・アウェイ全ての試合で入場禁止となる (資料提供・Local Football Japan) こうしてみると、そもそもこの「ぶちくらせ」という言葉、クラブが公式に使用していたのは事実であり、マスコットから社長に至るまで「ぶちくらせ!」と言っていたわけである。そして、使用にあたって政治や行政から圧力がかかったように見受けられるのも事実である。観光PR動画のセリフを差し替えさせたところからも、それはわかるはずだ。 言葉狩りだ! 不適切だったり不愉快な言葉は使わない方がいい! などさまざまな意見もあるのだが、事情を知らぬ者からすれば、なんのこっちゃ?と思うのは当然のこと。もちろん、差別的な表現や他者を侮辱する応援は絶対に許されないのだが、応援に使用する言葉にまでいちいち文句を付けられたのでは、観る方もたまったものではないと思うのはあたりまえではなかろうか。背筋を伸ばして、熱くなっても常にクールに言葉を選んで応援しなければならないというのだろうか。海外のサッカーやサッカー文化を日本に伝え、また日本のサッカーについても海外に発信し続ける活動を続けるフットボールメディアのLocal Football Japanに今回の騒動について話を聞いた。 「ぶちくらせという言葉だけが独り歩きしていて、騒動の本質が隠れてしまっているのではないかと思います。サポーター側にも問題はあると思いますが、それ以上にクラブ側に大きな問題があると考えています。ぶちくらせという言葉自体は過去にクラブが自ら使用してきたにも関わらず、そのことに関しては一切触れられていない。それに端を発した、クラブ側の一貫していない姿勢とその場しのぎの対応。取り繕うのに必死であり、サポーターへの過度な干渉を行っている点はクラブ側の対応としてはいかがなものかと思います」 また、Local Football Japanは今回の問題についてJリーグ、ひいてはサッカーというスポーツの本質についてまで、厳しく言及してくれた。少々長いが、 「この問題は、言葉だけではなくJリーグ全体が共有しなければならない。Jリーグが目指すべき地域密着とは何か? そして『幸せなスタジアム』とはどういうことか? 極論をいうと、勝負の世界で万人が幸せになることは不可能。それを目指しているのならば、勝負を捨てているということと同義なのではないかと思います。Jリーグが世の中に提供すべきは『真剣勝負』であると考えています。真剣勝負の上に、勝負があり、それでサポーターが一喜一憂する、それが『世界で一番幸せなスタジアム』に繋がっていくと思います。“勝っても負けても幸せなスタジアム”では、真剣勝負をしている選手達に失礼なのではと考えています。勝っても負けても同じではなく、勝利を選手とともに喜び、敗北を共に悔しがり、時にはぶつかりながらもともに勝利に向かって歩んでいく、それがクラブ、選手、サポーターの本当の絆なのではないでしょうか。こういう問題こそ、メディアは取り上げ、議論を深めて行くべきだと我々は考えています」
応援の在り方などについては、今後、議論を深めていく必要はあるようだ。だが、今回の騒動を部外者、サッカーやサポーターとは関係ない人から見たらどのように目に映るのだろうか? 競技の枠を飛び越えて話を伺ったのは、過激といえばやはりこの方々。関西某チームの元応援団関係者に今回の騒動について語ってもらった次第である。
「はぁ? そんなん言ったら、阪神ファンどころかプロ野球のファンなんかみんな出禁やん。アホちゃうか?」
事情を聞いて目をキョトンとさせたのは、関西在住の元プロ野球応援団関係者のA氏。
「ぶちくらせて、コッチ(関西)で言うとこの『いてこましたろか』みたいなもんやろ? そんなん言ったらオリックスなんか、近鉄の頃からいてまえいてまえ叫んどんやから完璧にアウトやん。いてまえ打線やもんな(笑)」
さらにA氏は続ける。
「今なんかみんなユニフォームにいろんな刺繍入れたりワッペン貼り付けて球場に来るでしょ。巨人戦なんか行くとごっついカワイイ女のコが背中に打倒読売どころか『くたばれ讀賣』とか刺繍入れてジャビットにバッテン入ったワッペン貼っつけたユニフォームとか着とるやん。こんなん出禁にしたら、阪神ファン半分くらい球場入れんよな(笑)。昔、背中に『オイ!!コラ 新庄剛志』と書いていた応援団がおったけど、それが理由で出禁にはならんかったよ。あと、神宮球場の7回裏は球場全体アウトで外野全員退場やんな。だって、巨人以外のチームの試合でも東京音頭に乗せて『くったばれ讀賣 くったばれ讀賣』って大合唱しとんやん。この北九州のチームの人がプロ野球の試合観たら気絶するんちゃうか?」
また、彼は出入り禁止という措置がどれほど重いものであるかを訥々と語ってくれた。
「出禁ってすっごく重いことなんや。一般の人からしたらものすっごく悪いことしたって見られんの。犯罪者の烙印押されるようなもんよ。ウチの会がとある理不尽な理由で出禁処分食らったときも応援団じゃない知り合いから『警察に捕まらへんの? 大丈夫なん?』って聞かれるだけじゃ終わらんかったよ。『あいつはヤクザとつるんでて、もう組に入った』とか『上納金のために甲子園のチケットでダフ屋しとった』とか、あることないこと言われたもん。そらツラいよ。好きなチームの応援を球場ではできんし、周りからは犯罪者扱いでさ……。俺は聞いた話でしか言えんけど、ぶちくらせって言葉がダメでそれ使ったら出禁って、そらやっぱおかしいよ。警備員ぶん殴ったとか、包丁持って東京ドーム行ったとか、法に触れたことしたらわかるけどな……同じく出禁になった身として、こんなことで出禁になった北九州の人らには同情するわ」
来年ギラヴァンツの試合では、はたして「ぶちくらせ」という言葉がスタジアムで聞こえるのだろうか……。
取材・文/SPA!サポーター問題取材班
11月1日に行われたギラヴァンツ北九州-京都サンガの試合において、クラブから禁止を通達されていた横断幕と応援をしたとして、ギラヴァンツ北九州のサポーター団体「YELOOW BRIGADE(以下:ブリゲード)」のメンバー14人に対し、クラブ側は「今後違反行為をしない」という念書を書くなら出入り禁止は取り消すとしたものの、サポーター団体側はこれを拒否。結果としてブリゲードの14人は無期限入場禁止の処分となった。
今回の騒動の発端となったのは、ギラヴァンツ北九州のサポーターが横断幕や旗、チャント(応援歌)に使用していた「ぶちくらせ」という言葉だ。クラブとサポーター団体の双方に言い分はあり、その溝は非常に深い。
そもそもこの「ぶちくらせ」とはどんな意味があるのだろうか? 方言学者に語ってもらった記事を引用させてもらおう。
【国立国語研究所の木部暢子教授(方言学)によると、「くらす」には「倒す」だけではなく、「殴って倒す」という意味も含むという。「不良が『くらすぞ』と言うときは、『ぼこぼこに殴るぞ』という意味合いで使っている」。強調語の「ぶち」が、「くらす」をさらに強めており、木部教授は「応援にはふさわしくないのでは」。】
【応援で「ぶちくらせ!」 J2北九州めぐり賛否両論】朝日新聞デジタル版 2015年7月4日 より引用
どうやらかなり語気の強めな言葉であることは確かなようである。では、実際に福岡に住んでいる方々の感覚では、どうなのだろうか? 記者の友人で福岡出身の40代の男性に聞いてみた。
「う~ん……キレイな言葉じゃないのは確かだね。『ぶっ倒せ』や『ぶん殴れ』よりも強め? まぁ、そう言われりゃそうだけど、その辺の感覚は難しいよ。関西弁の『いてまえ』とかに近いんじゃないかな」
他にも何人かの福岡出身者に話を聞いたのだが、答えは似たようなものだった。
このぶちくらせを巡ってクラブ側とサポーター側では、使うな! 使わせろ!と押し問答が続いており、今回の騒動に至ったというわけである。
そもそもこの問題、サポーターの間でも広く認知されていた応援だったことを急にクラブがやめろと言ったから揉めているわけではない。クラブがポスターなどで公式にこのぶちくらせという言葉を使用していた過去があり、テレビなどのメディアでも「方言を使った応援」として紹介され、広く認知されていたことが両者の溝を深くしていると言われている。少々長いが、ぶちくらせを巡る動きを時系列で見てみよう。
<2013年>
4月…アビスパ戦に向けて、「ぶちくらせ北九州」というダービー告知バナーをオフィシャルHPに掲載
10月…ダービー告知チラシを駅で選手、サポーター、クラブスタッフと一緒に配布後、横手敏夫ギラヴァンツ北九州代表取締役が挨拶にて「ぶちくらせ北九州」と発言
<2014年>
4月20日…アウェイ岡山戦にて前運営部長から「息の根止めろ」の歌詞が暴力的だと話があり。今後、そのチャントを使わないことを承諾
9月…市議会で平原じゅん議員がギラヴァンツ北九州の応援について質問
12月18日…横手敏夫ギラヴァンツ北九州代表取締役より「ぶちくらせを使ったチャントをもっと作ったらいいよ」と進言される
<2015年>
3月15日…ホーム開幕戦、NHK放送にて「方言による応援」として横断幕を紹介される
7月4日…「ぶちくらせ問題」としてネット記事になり、朝日新聞に掲載される。サポーター団体代表の染岡氏が横手敏夫ギラヴァンツ北九州代表取締役より、ぶちくらせを止めてほしいというクラブとしての考えを初めて聞く。サポーター団体「本満会」のHPにて「朝日新聞記事について」の見解を掲載
8日…ギラン(ギラヴァンツ北九州のマスコット)がアウェイ・アビスパ戦にて、ぶちくらせコールを要求
9日…クラブとサポーター団体「ブリゲイド」が協議。クラブは「応援に関するクラブの見解について」の文章を提示
17日…クラブが見解をHPにて発表
19日…サポーター団体「ブリゲイド」代表がFacebookにて見解を発表
23日…朝日新聞がクラブ側見解発表の記事を掲載
26日…クラブのTwitterにて、讃岐戦PVでのぶちくらせのツイートをリツイートするもすぐに削除
31日…クラブ側がTwitterに関するお詫びをHPに掲載
8月16日…ギラヴァンツ北九州ファン感謝祭にて、柱谷監督が挨拶で「ぶちくらわせられないように頑張ります」と発言
10月9日…お笑い芸人・ロバート×北九州市観光キャンペーン発表記者会見が市長同席のもと行われる。任侠映画の予告編PR動画として配信。台詞「ぶちくらしちゃるわ」と秋山が言っている。Yahoo!ニュースにて、一連の事柄の紹介記事が配信される
10月12日…フジテレビ「とくダネ」にて、話題沸騰!ご当地PR動画として紹介される
13日…動画配信中止となる
15日…公益社団法人北九州市観光協会に問い合わせ。「現在動画の編集作業中で終わればまた配信予定」との回答
23日…クラブの見解を発表。後日、協議の途中経過、双方の考え方、今後のクラブの対応を掲載予定
24日…公益社団法人北九州市観光協会、PR動画「第1弾 門司の竜次」を再度配信。ロバート秋山の台詞「ぶちくらしちゃるわ」→「うちのめしてやるわ」に変更
28日…クラブとブリゲイドが協議(4回目)。この協議において、近日中の「ぶちくらせ」の禁止が示唆された。当団体だけではなく、第3者の意見を聞く場の開催を要望するも、受け入れられなかった 30日…「ぶちくらせ」の使用を11/1のホーム・京都サンガF.C.戦以降禁止する旨が、クラブオフィシャルサイトにて通達される 11月1日…ホーム・京都サンガF.C.戦にて、ブリゲイドは、通常通りに「ぶちくらせ」を用いたチャントを使用し、「ぶちくらせ」の記載のある横断幕を掲示した。また、ブリゲイド以外でも、「ぶちくらせ」の記載のあるゲートフラッグや旗を掲げるサポーターも数名いた 4日…ブリゲイド以外のサポーターから、ブリゲイド以外のサポーターの意見を直接聞く場の開催をクラブにメールで依頼するも、受け入れられなかった。北九州市の北橋市長は、定例記者会見にて以下の発言を行った。 「(クラブ側の掲示禁止の)取り決めは自分としては納得している」 「『ぶちくらす』という言葉は、聞き慣れている人にはともかく、子どもや市外から来たサッカーファンにとってはギョッとさせられる言葉だ」 5日…ホーム京都戦での「ぶちくらせ」の使用に基づき、当該チャントの先導、及び旗を使用した計14名に対する処分が、各人に通達された 7日…念書を拒否したサポーター14人が処分保留となり、ギラヴァンツのホーム・アウェイ全ての試合で入場禁止となる (資料提供・Local Football Japan) こうしてみると、そもそもこの「ぶちくらせ」という言葉、クラブが公式に使用していたのは事実であり、マスコットから社長に至るまで「ぶちくらせ!」と言っていたわけである。そして、使用にあたって政治や行政から圧力がかかったように見受けられるのも事実である。観光PR動画のセリフを差し替えさせたところからも、それはわかるはずだ。 言葉狩りだ! 不適切だったり不愉快な言葉は使わない方がいい! などさまざまな意見もあるのだが、事情を知らぬ者からすれば、なんのこっちゃ?と思うのは当然のこと。もちろん、差別的な表現や他者を侮辱する応援は絶対に許されないのだが、応援に使用する言葉にまでいちいち文句を付けられたのでは、観る方もたまったものではないと思うのはあたりまえではなかろうか。背筋を伸ばして、熱くなっても常にクールに言葉を選んで応援しなければならないというのだろうか。海外のサッカーやサッカー文化を日本に伝え、また日本のサッカーについても海外に発信し続ける活動を続けるフットボールメディアのLocal Football Japanに今回の騒動について話を聞いた。 「ぶちくらせという言葉だけが独り歩きしていて、騒動の本質が隠れてしまっているのではないかと思います。サポーター側にも問題はあると思いますが、それ以上にクラブ側に大きな問題があると考えています。ぶちくらせという言葉自体は過去にクラブが自ら使用してきたにも関わらず、そのことに関しては一切触れられていない。それに端を発した、クラブ側の一貫していない姿勢とその場しのぎの対応。取り繕うのに必死であり、サポーターへの過度な干渉を行っている点はクラブ側の対応としてはいかがなものかと思います」 また、Local Football Japanは今回の問題についてJリーグ、ひいてはサッカーというスポーツの本質についてまで、厳しく言及してくれた。少々長いが、 「この問題は、言葉だけではなくJリーグ全体が共有しなければならない。Jリーグが目指すべき地域密着とは何か? そして『幸せなスタジアム』とはどういうことか? 極論をいうと、勝負の世界で万人が幸せになることは不可能。それを目指しているのならば、勝負を捨てているということと同義なのではないかと思います。Jリーグが世の中に提供すべきは『真剣勝負』であると考えています。真剣勝負の上に、勝負があり、それでサポーターが一喜一憂する、それが『世界で一番幸せなスタジアム』に繋がっていくと思います。“勝っても負けても幸せなスタジアム”では、真剣勝負をしている選手達に失礼なのではと考えています。勝っても負けても同じではなく、勝利を選手とともに喜び、敗北を共に悔しがり、時にはぶつかりながらもともに勝利に向かって歩んでいく、それがクラブ、選手、サポーターの本当の絆なのではないでしょうか。こういう問題こそ、メディアは取り上げ、議論を深めて行くべきだと我々は考えています」
プロ野球の元応援団関係者は北九州の件で胸を痛める
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