歴史博物館は、歴史の面白さを伝えられるか(1)――広島、新潟の両県立歴史博物館の優れた展示

広島県立歴史博物館で展示されている「幻の町・草戸千軒」の実物大再現

 わが国は歴史の古い国であり、日本各地には、その悠久な歴史を映した貴重な史跡や文化財が数えきれないほど多数ある。  この歴史・文化遺産を活用した歴史博物館(名称は資料館や記念館、あるいは考古館などさまざまである)が、公立(県立や市立)や財団などによって数多く設立されている。  筆者も各地を訪ねた折に、そうした歴史博物館をできるだけ訪問しようと心がけてきた。    印象深い歴史博物館はいくつかあるが、とりわけ広島県立歴史博物館(広島県福山市。愛称=ふくやま草戸千軒ミュージアム)と新潟県立歴史博物館(新潟県長岡市)は、その展示内容に興味が引かれ、歴史の面白さを感じることができた。

幻の町・草戸千軒を展示する広島県立歴史博物館

 例えば、広島県立歴史博物館は、鎌倉時代から室町時代にかけて、海と陸の交通の要地に位置し、交易の場として栄えた「草戸千軒(くさどせんげん)」の船着場や市場の様子を実物大で再現し(上の写真参照)、さらに、当時の街並みを60分の1のスケールの模型で再現している。  この草戸千軒という町は、江戸時代中期の書物に、洪水で流されたとも読める記述があったが、その他に具体的な記録がなかったため、遠い昔の伝説として忘れ去られていた。  ところが、河川工事によって大量の古銭が発見されたことを契機に、1960年代以降、本格的な発掘調査が行われ、「幻の町」とされていた草戸千軒の存在が実証され、その姿が復元されたのである。

秀逸な新潟県立歴史博物館の縄文展示

 次に、新潟県立歴史博物館の縄文展示は秀逸だ。縄文時代の人々の暮らしぶりを等身大のスケールで再現している。  冬の狩り、春の採集、夏の海、秋の広場と四季に分け、綿密な考古学の研究成果を基に、手に取るように暮らしぶりが分かる。  また、矢じりやナイフに使われた黒曜石や飾りに使われたヒスイの原産地は、日本列島で限られていたが、これまで各地の縄文遺跡から見つかっている。  丸木舟を利用し川や海を移動するなど、広い地域で物々交換などの交易が行われており、日本列島には「縄文文化圏」といえる優れた文化があったことが、展示内容から理解できる。  広島、新潟の両県立博物館とも、まるでその時代にタイムスリップしたような感動が味わえる展示となっている。  近年、各地の県立や府立、さらに市立の歴史博物館は、児童・生徒に歴史の面白さを知って欲しいという願いと、さらに観光の目玉の集客装置とすべく、展示内容を充実させ、大幅にリニューアルする施設も出てきた。  そうした有意義な歴史博物館については、改めて本サイトで追々紹介していきたい。(続く) (文責=育鵬社編集部M)
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