蓮舫氏の二重国籍問題と激変する世界(第1回)

 評論家の八幡和郎氏が火をつけた蓮舫氏の二重国籍問題。その経緯をまとめた『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)が出版されました。歴史作家でもある八幡先生は、12月24日に扶桑社新書から『世界と日本がわかる最強の世界史』を出します。そんな八幡先生に蓮舫問題の経緯と世界史の新刊について尋ねました。

国籍意識とメディア論

 蓮舫さんの二重国籍問題ですが、今回の騒ぎには2つの意味があります。それは、そもそも日本は島国で移民も少ない中、初めて日本人に国籍を意識させたことです。  日本人が国籍を意識するのは、在日韓国・朝鮮人の人が帰化するか迷っているのを聞いて大変だなあと思うときくらい。それが、なんと野党第1党の党首が二重国籍だったといわれてもぴんとこない人が多かった。  民進党のホームページでは蓮舫さんは「ネクスト総理大臣」となっていますし、公人中の公人の国籍問題に対して、蓮舫さんが正直に答えなかったということで国民の関心を呼んだわけです。
蓮舫サイト

蓮舫議員サイト(renho.jp)より

そして、もう1つはメディア論。都知事選では小池百合子氏が当選し、鳥越俊太郎氏が落選しました。テレビ・新聞は鳥越氏のスキャンダルを追っかけることはなく、雑誌が彼にとどめを刺した。  二重国籍問題の場合は、雑誌すらほとんど無力だった。アゴラというネットメディアとそれを追っかける形で夕刊フジが活字化して、それに少し遅れて産経新聞が記事にする。そこから広がった。ただし、主戦場はネットメディアでした。そこに多くの人が参加していった。

都知事選挙の候補者

 そもそものきっかけは、夏の東京都知事選挙で、蓮舫さんの名前が挙がりましたよね。その時、日本に帰化した人が都知事ということは面白いかも知れないけど、それまでの蓮舫さんの発言を思い返すと、彼女が日本文化のこともわかっていないようだし、尖閣問題のことも中途半端な発言を繰り返していて、日本に忠実でもないような印象でした。  もともと外国人だったのだから、とくに、日本への愛着と忠誠を示して欲しいと思い、これはちょっとおかしいのではないかと考え、アゴラで書き始めたのです。  そうしたら、蓮舫さんが民進党の代表選挙に立候補することになり、仮にも野党第1党の党首で、総理大臣を目指すというのであれば、都知事以上ですから、引き続き書いていきました。

留学中に国籍問題を意識

 私は通産省時代にフランスのENA(国立行政学院)に留学しました。ここは大統領も輩出する官僚の養成所でエリートが集まっています。ここでフランスの政・官・財界の人たちと話をしていると、意外なことにフランスに帰化した人が多かったのですね。ただし、日本と違うなと思ったのは、帰化した人ほど、あえて「自分はフランスが好きだ。フランスに忠誠を尽くす」というのです。  日本の政治家でいうと、帰化した人で黙っていて言わないという人も多いし、どちらかというと「反日」で売り出している人もいる。それは、ちょっとおかしいのではと思っていました。  政治家ではないですが、たとえば、金美麗さんや呉善花さんほどでなくとも、実利的に得と言うだけでなく、日本が好きだから日本人になった、外交上の問題も日本人になった以上は日本を支持するということが政治家の場合に絶対必要です。  逆の立場でアメリカのダニエル・イノウエ上院議員など日本に非常に厳しかったですよ。でも、蓮舫さんの場合は、少し違うという違和感がありました。  ですから、彼女が民進党の代表選に出ることになってからは、国防・防衛を担うかなめの人が国家意識も国に対する忠誠心もないのでは困ると書きました。 【八幡和郎(やわた・かずお)】 1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任後、現在、徳島文理大学大学院教授を務め、作家、評論家としてテレビなどでも活躍中。著著に『世界と日本がわかる最強の世界史』『皇位継承と万世一系に謎はない』(ともに扶桑社新書)、『誤解だらけの京都の真実』(イースト新書)、『最終解答 日本近現代史』(PHP文庫)ほか多数。
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