「生き抜く覚悟」と「平和の尊さ」を学べる平和祈念展示資料館(1)――兵士、戦後強制抑留者、引揚者の想像を超える労苦

平和祈念展示資料館の入口(写真提供=同館)

 先日、平和祈念展示資料館(東京都新宿区)を見学する機会があった。場所は、東京都庁の道路を挟み真向かいの新宿住友ビル48階の一角にある。

 この資料館の常設展示のテーマは三つに分かれている。

 一つ目は兵士コーナー。
「さきの大戦において、国のために家族を残し、危険な戦地に向かい、命をかけて戦務に従事し、大変な労苦を体験された方々」(同資料館リーフレットより)

 二つ目は戦後強制抑留者コーナー。
「戦争が終結したにもかかわらず、シベリアを始めとする旧ソ連やモンゴルの酷寒(こっかん)の地において、乏しい食糧と劣悪な生活環境の中で過酷な強制労働に従事させられた方々」(同上)

 三つ目は海外からの引揚者コーナー。
「敗戦によって外地での生活のよりどころを失い、身に危険が迫る過酷な状況の中をくぐり抜けて祖国に戻ってこられた方々」(同上)

 この、兵士、強制抑留者、引揚者の想像を超える労苦の様子が、実物の資料や再現されたジオラマ、当時の映像などで展示されている。

極限状況の中での生き抜く覚悟が伝わる


 この資料館には、過剰な演出はない。日本の一部の歴史博物館によくありがちな、先の大戦を高みから見下し、安易な論評をする解説もない。先の大戦の兵士、戦後の抑留、引揚げの労苦の様子が、事実に基づき淡々と展示されている。

 展示スペースは、約600㎡(約180坪)と決して広いとは言えないが、展示者の歴史的事実を客観的に後世に伝えたいという思いが的確に凝縮されており、一つの「小宇宙」とも言える空間のまとまりを示している。

 そのため、見学を終えた後、一部の歴史博物館でよく感じる後味の悪さはなかった。むしろ、戦争とその後の抑留や引揚げという重いテーマでありながらも、そうした先人の労苦の上に現在の私たちがいることが理解でき、また平和の尊さを改めて認識できた。

 さらに何よりも、極限状況の中で希望を失わずに生き抜こうとした先人の人々の覚悟が感じられ、勇気をいただいた気がした。

 頭だけで理解するというよりは、心でも感じられる貴重な戦争博物館となっている。

 まずは、この資料館ができた経緯から辿ってみよう。(続く)

(取材・文=育鵬社編集部M)




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