【連載 たかくら引越センター】僕は芸人、ときどき社長(第2回:昨今の引っ越し事情について)

 全国の引っ越しファンの皆様、こんにちは! たかくら引越センターの高倉です。

 前回は自己紹介がてら、たかくら引越センターが生まれるまでについて書きました。僕が引っ越し屋のアルバイトを始めたのは、18年前。当時に比べると、作業の技術やクオリティが上がったのはもちろんですが、引っ越しを巡る背景にも、いろいろと変化があったように思います。

昨今の引っ越し事情/たかくら引越センター

ピアノ以外はひとりで運べます!

 引っ越しとは、人のプライベートが全て見えてしまうもの。多々気を遣うところはありますが、同時に、今の流行りやご時世を垣間見ることができるのです。

 そこで、連載2回目となる今回は、最近の引っ越し事情について、少しお話したいと思います。

影を潜める婚礼家具


 18年前には、婚礼家具と呼ばれる、洋服箪笥、和箪笥、整理箪笥の3点セットが、必ずと言って良いほど各家庭にありました。僕たち作業員にとっては、これをいかに早く組み立てて、手際よく運び出せるかが最大の見せ場であり、ひとりで運び出すことができれば一人前と認められていました。

 見たこともないような大きな箪笥に遭遇すると、それはもうテンションが上がったものです。まるで、テレビゲームで最後の強敵(ラスボス)と戦う時のように(笑)。

 しかしながら、大手家具メーカーも廃業を迎えている昨今。婚礼家具を見かけることはほぼ無くなり、もはや“婚礼家具”という言葉自体が死語になりつつあるぐらいです。

 名古屋の方では、引っ越しトラックの荷台がスケルトンになっていて、嫁入りする時、わざわざ婚礼家具を見せびらかしながら運ぶという風習があると聞きましたが、今の時代も、それが続いているのかは謎です。

 以前のように婚礼家具が見られなくなったのには、核家族化やマンション増加による戸建の減少など、いろんな要因が考えられますが、運び手としては楽になった反面、どこか寂しい気持ちにもなります。若手の引っ越し作業員の中には、婚礼家具の運び方を知らない者もいるのではないでしょうか。

 もし、うちの婚礼家具を運んでも良いよ、という方がいらっしゃいましたら、ぜひ弊社へ一報頂ければと思います(笑)。

 地域によって異なるとは思いますが、都市部に限っていえば、婚礼家具だけでなく、家具の数はここ10年でかなりの減少傾向にあると思います。

 「ミニマリスト」という言葉ができたように、家具を持たない時代が到来しているのかもしれません。

 引っ越し屋としましては、商売上がったりの傾向ですね(泣)。

シェアハウスの次は「寮」がくる!?


 2~3年前、シェアハウスにおしゃれな男女が同居する様子を記録した某テレビ番組の影響もあり、シェアハウスという生活スタイルが急激に伸びました。当時は、これからシェアハウスに住むという方のお引っ越しが頻繁にありましたが、ここ最近では逆に、シェアハウスから出ていくというお引っ越しが増えています。

 番組を見て淡い下心を抱いて入居したものの、テレビのように容姿端麗の異性がいるはずもなく、ましてや、赤の他人との共同生活に限界を感じた……。

 若干、毒のある脚色を加えていますが、出ていく方の感想を聞くと、だいたいこのような感想が返ってきます。なかには、入居してはじめて、同性しかいないことに気が付いたという人もいました。

 僕も、シェアハウスに興味がないことはないのですが、他人に気を遣う日本人にとっては、そもそも不向きな生活スタイルのような気がします。

 同じ共同生活でも、いろいろとお世話をしてくれる方がいる寮の方が、まだ居心地は良いかもしれませんね。

 ただ、もし仮に寮住まいになったとしても、シェアハウスの方が聞こえが良いので、寮に住んでいるとは絶対に言わないと思いますが(笑)。

 と、冗談混じりで書きましたが、時代の流行りと共に、住居の流行りも移り変わる、というのはたしかに言えると思います。近い未来、寮が流行るのではないかと勝手にワクワクしつつ、日々引っ越しに勤しんでおります。

離婚で出ていく妻の決まり文句


 長年、この仕事をしていると、良くも悪くも、いろいろな状況のお引っ越しに携わります。

 良い方の例を挙げれば、進学や就職などで初めて一人暮らしをする人のお引っ越しや、家族が増えたことに伴った広い部屋へのお引っ越し。芸人の場合なら、仕事(=収入)が増え、部屋のグレードアップによるお引っ越し。こういう時は、僕らも笑顔で楽しい雰囲気のなか作業ができますが、これとは真逆のパターンがあるのも事実です。

 たとえば、離婚に伴うお引っ越しや、何かしらのトラブルによる夜逃げ同然のお引っ越し。芸人の場合だと、仕事激減による都落ちのお引っ越し。こちらは当然、作業中も終始、地獄のような空気が流れます。

 できれば後者のようなケースは減って欲しいですが、残念ながら、近年、特に増えてきているのが、離婚が原因のお引っ越しです。これもご時世ということなのでしょうか。

 それにもいろいろとあり、属に“円満引っ越し”と呼ばれる、お互い納得したうえのものから、夫がいない時を狙った妻の“コソコソ引っ越し”、険悪なムードの“喧嘩引っ越し”など、いくつかの種類に分かれます。

 そして奥様達は、「夫も家具と一緒に捨てます」という、お決まりの離婚引っ越しギャグを言い放ってきますが、毎回、苦笑いからの重い空気になるのは、皆さんにもきっと想像がつきますね……。

 ちなみに、仕事が激減した芸人の引っ越しは、始めこそ空気が重くはなるものの、最後には笑って今の環境を楽しもうとしている人が大半です。芸人は本当に生命力が強い生き物だと思います(笑)。

引っ越し屋の未来はいかに……?


 ここまでいろいろと書いてきましたが、人は、人生において平均3.5回の引っ越しをすると言われており、そこにはいろんなドラマがあります。

『家政婦は見た』ではありませんが、引っ越し屋もよく見ています(笑)。

 ただ、ひとつ言えるのは、良いお引っ越しでも悪いお引っ越しでも、最後は同じように皆さん「ありがとうございます」と言ってくれるんです。その言葉が嬉しくて、今日まで僕は、引っ越し業に携わってこられたのだと思います。

 最近では、「ノマド」という、カフェやレンタルオフィスを渡り歩き、オフィスを持たず仕事をする「ノマドワーク」なるものが流行っていると聞きます。当然、僕の会社でもオフィス間のお引っ越しも請け負っていますので、この「ノマド」というスタイルには、危機を感じてしまいます。

 ちなみに、初めて「ノマド」という言葉を聞いたとき、「NO窓」という意味だと思っていましたが、どうやら英語で「遊牧民」という意味だったみたいですね……。

 僕の知り合いには、オフィスのみならず、住居を持たずホテルを渡り歩いて暮らしている方もいらっしゃいます。なんとも、引っ越し屋泣かせの時代です。

 とは言いつつも、引っ越しは機械化もできず、絶対に無くならないお仕事だと、僕は確信しています。流行りや時代に寄り沿うことを常に心がけて、これからも世の中を引っ越していきたいと思います。

 ミニマリストと、ノマドの恐怖に怯えながら……。

【たかくら引越センター】
たかくら引越センター本名:高倉弘樹(たかくら・こうき)。1982年4月27日、福岡県朝倉郡東峰村出身。東京NSC11期生。2005年に「たかくら伝説」としてデビュー。10年、芸名をたかくら引越センターに改名。12年、軽貨物運送事業として「たかくら引越センター」を開業する。15年には法人化し、一般貨物自動車運送事業の許可取得。芸人と引っ越し会社社長の2足のわらじを履いて活躍中。





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