異能・異端の元財務官僚が日本を救う(5)――経済政策の最大の眼目は「失業率を下げ雇用の確保」
深刻な失業をもたらすデフレ不況の恐ろしさ
2000年代に入っても、日銀の間違いは続く。例えば、2000(平成12)年8月のゼロ金利解除、2006年3月の量的緩和解除など、その当時、インフレ率はマイナスであり、デフレであったにもかかわらず金融引き締めを行った。その詳細については、高橋洋一氏の近刊『日本を救う最強の経済論』を読んでいただきたい。 こうした日銀の誤った金融引き締めにより、日本は深刻なデフレが進み「失われた20年」を経験する。 デフレーション(デフレ)とは、言うまでもなく物やサービスの値段が下がること。例えば3万円はしていたスーツが、デフレ時には1万円で買えるようになる。 このような「個別価格」は、自分の給料が一定であれば、「安く買えるのは良いこと」であり主婦感覚にもマッチする。 しかし、マクロ経済学で見た時、物価水準を示す「一般物価」が下落する現象においては、どのような悪影響、副作用が生じるのか。 簡単に言えば、物の値段を安くしないと売れないから、企業の収益は低下する。会社が貧乏になり給料が下がる。あるいは、解雇される社員が出る。つまりデフレは、自分の給料が一定であるどころか賃下げを生み、さらに雇用の喪失を生み出すのである。 高橋洋一氏は、近刊書で次のように言う。 経済政策は何のために行うのか。それは一言でいえば、「失業率を減らし雇用を確保する」ためである。さらに欲を言えば、第二段階として所得が増えることであるが、まず何よりも雇用の確保が最大の眼目である。人によっては、社会保障を充実させるためとか、財政再建をするためと考える人がいるかもしれないが、それは付随的な要素であり、最大の眼目ではない。(同書、まえがきより) 雇用が無ければ人間は不安に陥り、社会不安が増大し、社会の活力が低下する。失業率を下げるというアベノミクスの真髄
(社会の活力を低下させないために)金融緩和を行い、さらに世の中全体のお金の量を増やしていけば、全体のサイフの中身が増え、その結果、一つひとつの商品の価格は分からないが、全体の物価はこれで上がる。物価が上がってインフレ率が上がると(企業は収益が上がるので、雇用を確保するので)失業率が下がる。つまり、お金の量を増やせば、物価が上がり、その結果として失業率が下がるのだから、財務省や日本銀行が行う金融政策というのはこうしたコントロールをすることだ。(同書、128ページ要約) 今から5年ほど前の2012(平成24)年12月に第二次安倍政権が発足し、金融緩和を行いインフレターゲット(目標)2%を設定し失業率を下げているこの金融政策が、「アベノミクス」の真髄なのである。 高橋洋一氏は、アベノミクスの枢要なシナリオライター(脚本家)の一人であり、日経新聞もそうしたイラストを掲載している(上の写真参照)。 政府の経済・金融政策は、当然のことながら結果が問われる。 失業率の年平均の推移は、以下の通りだ。バブル崩壊後の2002(平成14)年に5.4%と過去最悪になり、またリーマンショックの影響で雇用情勢が悪化した2009(平成21)年も5.1%を記録していたが、以後、アベノミクスの効果が発揮し、景気回復とともに低下傾向が続いている。 2013年は4.0%、14年は3.6%、15年は3.4%、16年は3.1%であり、2017年念の2月以降は、バブル景気時の2%台前半と、失業率はアベノミクスで劇的に良化している。(続く) (文責=育鵬社編集部M)
『日本を救う最強の経済論』 バブルの対策を誤り、その後の「失われた20年」を系統的に解き明かし、今後のわが国の成長戦略を描いた著者会心の書。 |
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