旧石器ハテナ館が面白い(5)――客観的で最新の知見に基づいた展示がいい!

史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館(旧石器ハテナ館)のエントランス風景

史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館(旧石器ハテナ館)のエントランス風景

 さて、神奈川県相模原市の田名向原遺跡は、全国で1万か所を超える旧石器時代の遺跡の一つであるが、遺跡に博物館が併設され全国でも貴重な存在だ。

 また、この旧石器ハテナ館の展示や説明パネルは、考古学界の学閥と徒弟制度に起因する変なバイアス(思い込みによる考え方の偏り)がなく、客観的で分かりやすく大変に良くできている。

 これは、この遺跡発掘やその後の整備事業を特定の研究機関や大学に丸投げしたのではなく、相模原市が主体となって行ってきたためバイアスがないこと、さらに開館が平成21年と新しいため最新の知見に基づき解説されているからではないかと推測する。

 では、このハテナ館の優れた展示は多々あるが、ここではポイントを3つに絞り箇条書きで紹介してみよう。

①旧石器時代の暮らしの再現コーナー
 ここでは、狩猟、採集、皮なめし、石器づくりを行っている4体の人形模型が置かれ、その背景には、旧石器人の暮らしや自然環境を時代考証に基づき描いたイメージ画が描かれている。狩猟をする人形は木の長い棒を手に持ち、その先端には槍先型尖頭器とおぼしき石器が紐でくくりつけられ、獲物を狙っている様子に迫力がある。足元には、獣の皮で作られたブーツが置かれている。
また、そのコーナーの一角には、当時の調理方法の一つと考えられる「蒸し焼き」の様子も再現され、ブーツや食事法など2万年前の旧石器人の暮らしぶりを見ると、現代人とそうは変わらないという感慨を抱く。

1万年1㎝とした大型のビジュアル年表がいい


②大型ビジュアル年表
 これは傑作である。「人類の進化・拡散と日本列島の旧石器文化」と題した長さ6mを超える大型パネルは、1万年を1㎝としたビジュアル年表である。このパネルでは、人類の祖先の誕生を600万年前と想定し、その後、250年前から石器が作られ始め(前期中石器時代)、30万年前から中期旧石器時代が始まり、私たちの直接の祖先と考えられているホモ・サピエンスが約10万年前にアフリカからユーラシア大陸の全土に拡散し、日本列島には約4~3万年前に渡ってきたと想定される時間の流れを、ビジュアルに表現している。
 そして4万年前から後期旧石器時代が始まり、約2万年前のメモリの所では、田名向原遺跡の写真が掲載されており、この6mを超えるパネルをじっくり見ていくと、600万年の
人類の歴史が分かる工夫が施されている。写真で紹介できないのが誠に残念だ。
 
③旧石器をテーマにした他の博物館、資料館の紹介
 このハテナ館を見学した考古学好きの人が、他の博物館も見学したくなるのを見越し、以下に記す全国の8か所の旧石器時代の博物館をパネルで紹介してくれている。
(1)史跡ピリカ遺跡(ピリカ旧石器文化館、北海道)
(2)仙台市富沢遺跡保存館(地底の森ミュージアム、宮城県)
(3)相沢忠洋記念館(群馬県) (4)岩宿遺跡(岩宿博物館、群馬県)
(5)野尻湖ナウマンゾウ博物館(長野県)
(6)星くずの里たかやま 黒耀石体験ミュージアム(長野県)
(7)翠鳥園遺跡公園(大阪府) (8)香芝市二上山博物館(奈良県)

 この旧石器ハテナ館は正式名称が学習館なので、館の運営業務を行うスタッフを「学習指導員」と称している。訪問当日、立て込んでいない時間を見計らい、いくつか質問をしたところ若い女性の学習指導員が懇切に対応してくれた。多謝!

 交通アクセスは、JR相模原線原当麻(はらたいま)駅からバスで10分ほど。ただし、バスの本数が少ないという(徒歩だと45分)。車のある人は、圏央道相模原愛川ICから5分ほど。駐車は無料。何と入館料も無料! 

最後に、この施設を管轄する相模原市にお願いがある。史跡田名向原遺跡の発掘の状況と旧石器ハテナ館の展示や解説パネルをまとめた図録を作成していただけないだろうか。1500円くらいまでなら、その後の勉強のためにも購読をする人は多いのではと思う。

 いずれにしろ、旧石器時代に興味がある人には必見の場所だ。(了)

(文責=育鵬社編集部M)




関連記事