減塩食品を求めて[楽しくなければ闘病じゃない:心臓バイパス手術を克服したテレビマンの回想記(第41話)]

コンビニおにぎり

「この二つのおにぎりでも食塩相当量は2gになってしまう」

間食の趣向が変わった


「柿の種」より「かきもち」、「つぶあん」より「こしあん」、「饅頭」より「大福」……。

 間食好きのボクの趣向が病前と病後では変わってしまった。食塩摂取が制限されたからである。

「柿の種」は醤油まぶしなので振り塩で味付けの「かきもち」より塩分が多い。「饅頭」と「大福」は同じ餡をつかっていても「饅頭」の方が皮の部分に塩分が使われている。

 病後ボクの食塩摂取は、一日6g以下と制限された。それまでは13g以上を採っていた。それが動脈硬化の一因になっていたのである。
 もちろん病前だって食生活には気を付けていた。

和食の落とし穴


 和食はヘルシーと認識していたので、若いころから和食中心の食生活だった。

 なにしろ肉より魚がメインだし、その魚だって多士済々だ。季節感もあるし、青身の魚には血液をサラサラにする成分が含まれている。

 育った場所が海の近くだったので新鮮な魚介が簡単に手に入る。海藻も同様で、最近健康食材として人気が出てきた「あかもく」だって昔から食べていた。

 醤油や味噌の味付けも好きだった。刺身にはたっぷり醤油を付けたし、味噌汁は最後の一滴まで飲んだ。漬物も好きで、毎食、何らかの漬物が食卓にあった。そこが和食の魅力と心得ていた。

 なんのことはない、その和食の魅力に落とし穴があったのである。味噌汁は汁まで飲むとおよそ2グラムの食塩摂取になる。漬物はタクワン5切れでおよそ2グラムの食塩を含んでいる。

 それをありがたがって毎食堪能していたわけだから、動脈硬化にならない方が不思議というものである。

栄養表示に気を付けて


 そうした食生活の反省から、今では食品を買う時には表示をしっかり確かめ、いくらかでも食塩相当量・ナトリウム含有量の少ないものを選んでいる。

 こうした減塩に関する意識は流通業者やメーカーにも浸透してきた。ボクのランチはおにぎり二つが定番になって久しいが、いつもオフィスと同じ建物にあるセブンイレブンで調達してくる。

 このコンビニは栄養表示にも積極的に取り組んでいて、おにぎりやパンなどの包装紙に細かく記載してある。

 その中から、ナトリウム含有量の少なめな紅さけ(337mg)、日高昆布(504mg)のおにぎりなどを買うのだが、それでも食塩に換算すると2gになってしまう。

 時に変化を求めて紀州南高梅のおにぎりにも手が行くが、これは523mgのナトリウムを含んでいる。

 醸造メーカーも減塩醤油や味噌に取り組んでいる。製麺業者やインスタント食品メーカー、漬物業者も負けてはいない。減塩、塩分控えめ、塩分Offなど広告表示は様々だが、塩の摂りすぎに関して配慮した商品が目立ってきた。

 ただ購入するときには、広告だけでなく栄養表示を確認した方が、確かなことは間違いない。

 日本には糖尿病罹病者が1000万人、その予備軍が1000万人いるという。それだけでも人口の6分の1だ。マーケットとしては小さくない。

 食塩だけコントロールできれば「能事足れり」というわけではないが、それでも彼らを覚醒して糖尿病合併症が防げれば突然死の不幸もなくなるし、医療費だって節減できる。

ああ…サラリーマン


 ボクは長年サラリーマンをやってきた。サラリーマンの語源は、古代ローマで兵士に報酬として与えられた塩(サラリウム)に由来するという。

 サラリウムは塩(Salt)の語源だが、それだけ貴重品であった。塩がなければ働けないどころか健康も維持できないことはいうまでもない。

 語源に忠実ならば、サラリーマンは「塩の人」である。ただ、ボクはサラリーはほどほどだったが、塩は摂りすぎた。

なにごとも「塩梅」が肝腎である。

協力:東京慈恵会医科大学附属病院

【境政郎(さかい・まさお)】
1940年中国大連生まれ。1964年フジテレビジョン入社。1972~80年、商品レポーターとして番組出演。2001年常務取締役、05年エフシージー総合研究所社長、12年同会長、16年同相談役。著者に『テレビショッピング事始め』(扶桑社)、『水野成夫の時代 社会運動の闘士がフジサンケイグループを創るまで』(日本工業新聞社)、『「肥後もっこす」かく戦えり 電通創業者光永星郎と激動期の外相内田康哉の時代』(日本工業新聞社)。




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