世界文化遺産から読み解く世界史【第48回:自由と義務――自由の女神像】

自由の女神(縮小)

自由の女神

自由と希望を求めた移民たちは自由を得られたのか

 自由を掲げたアメリカは、非常に伸びていくことになりました。それを象徴するのが、ニューヨークのマンハッタンに立つ自由の女神です。  これは、アメリカ合衆国の独立百周年を記念して、独立戦争時に支援したフランスから贈られたものです。  1874年にプロイセンとの戦争に敗れた直後のパリですが、国民の募金によってつくられました。製作者はバルトルビーという彫刻家で、設計を担当したのが、エッフェル塔の設計に関わったギュスターブ・エッフェルでした。  10年の歳月をかけてつくられ、それがニューヨークに運ばれたのです。1886年に除幕式が行われ、クリーブランド大統領が出席し、女神像の誕生を祝いました。像の高さは46メートル、台座も47メートル。独立宣言を記した銘板を左手に持ち、右手には希望を意味する松明を掲げています。足かせには、奴隷制度と独裁政治が象徴されています。  奴隷制度と独裁政治を踏みつぶしている像そのものが、まさにそういうことを行ってきたヨーロッパの歴史を象徴しているのです。この自由の女神に表された自由と希望を求めてやってきた移民たちが、果たしてそこで自由を得られたかのどうか――。  自由は一方で必ず義務をともないます。自由だけということはあり得ません。このことは、資本主義による国づくりにともなう貧富の差も生んでいます。資本主義そのものが持っているそうした問題も抱えているのです。 (出典/田中英道著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社) 【田中英道(たなか・ひでみち)】 東北大学名誉教授。日本国史学会代表。 著書に新刊『日本国史――世界最古の国の新しい物語』のほか『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『[増補]日本の文化 本当は何がすごいのか』『[増補]世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本文化のすごさがわかる日本の美仏50選』『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』など多数。
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