世界文化遺産から読み解く世界史【第49回:これからの世界文化遺産はどうなるのか】

シドニーのオペラハウス(縮小)

シドニーのオペラハウス


グローバル化の中で進む没個性

 20世紀の後半は、第二次大戦の負の遺産であるアウシュビッツや広島の原爆ドームが顕著なもので、あとはほとんどありません。遺産であるから、現代のものはまだその対象にならないということでしょう。しかし問題は、20世紀後半のさまざまな地域の建築などが、果たして百年後に世界文化遺産になるかということです。

 20世紀になってからつくられたブラジリアのような人工都市や、デッサウ(ドイツ)のバウハウス(美術・建築に関する総合教育を行った学校)、シドニーのオペラハウスなどの現代建築がすでに世界文化遺産となっていますが、近代建築の巨匠と呼ばれたル・コルビュジェの建築も、まだ話題になっていない丹下健三などの建築も、果たして、世界文化遺産となるかということです。

 それらが他の建築家の建物と比べて抜きん出ている傑作かとなると疑問です。現代は、合理性や経済性が中心的な創造性となっていますから、類似のものがいくらでも出てくるのです。ですから、こうした戦後の巨匠といわれる人たちの建築もすぐに真似され、次々と類似のものが生まれてくると、その独自性がなくなって、おそらく彼らの建築は選ばれなくなるでしょう。

 人類の歴史で重要な、時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積といったものも、現代のグローバリゼーションの中で、世界中同じ様式のものがつくられているかぎり、それは評価の対象にはならないでしょう。

(出典/田中英道著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社)

【田中英道(たなか・ひでみち)】
東北大学名誉教授。日本国史学会代表。
著書に新刊『日本国史――世界最古の国の新しい物語』のほか『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『[増補]日本の文化 本当は何がすごいのか』『[増補]世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本文化のすごさがわかる日本の美仏50選』『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』など多数。

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