愛国のリアリズムで真贋を見分ける③――「地球市民志向の空想主義」は国を誤る
国連に過度の期待は禁物
一方、過度に国連(国際連合)に期待する国連至上主義を持つ人もいる。国連こそが、世界平和を実現してくれるという「思い込み」を持ち、熱心に生徒に教え込む。 しかし現実では、国連には安保理(安全保障理事会)常任理事国という5か国(米、英、仏、露、中)が拒否権をもっており、自国に不都合な決議に反対するため、紛争が解決されないこともしばしば発生してきた。中国という、覇権主義・侵略行為を行っている国が拒否権を持っており、国連に過度の期待は禁物である。 高橋洋一氏は、前作の『日本を救う最強の経済論』で、「パワーポリティクスから目を背けるな」と題して次のように述べる。 国際政治の力学はパワーポリティクスで動いており、いわば弱肉強食の世界だ。隙を見せた方が悪いというのが国際政治だが、軍事的な牽制がなくなればパワーバランスが崩れ、その地域は一気に不安定化するだろう。 国際社会は「なめるか、なめられるか」の世界だ。互いの実力、行動力の探り合いや、「相手が引いたら自分が押す」式の駆け引きが、国際政治の舞台ではつねに繰り広げられている。 すべての国がほぼ均等な力で押し合い、均衡が続いている間は何も動かないが、ひとたび、どちらかが引けば、もう一方が押す。弱みや隙を見せれば、一気に付け込まれる。自国が不戦を誓っていても、そうでない国が存在するとしたら、対抗策を取らざるをえない場合もあって当然だろう。これが、今までもずっと繰り返されてきた国際政治の常識なのだ。(199ページ) そうであるならば、価値観を共有し合う国が同盟を結び、覇権主義・侵略行為に「集団的自衛権」で対抗し、平和を維持することが最も賢明な策となる。 それでもなお、思い込みの強い左派系の人々は、頑なに集団的自衛権の行使に反対する。国連そのものが、「集団的自衛権」を認めているにもかかわらずだ。 「愛国のリアリズム」の対極に位置する「地球市民志向の空想主義」が、思考ゲームの域をはみ出て実際の政治で悪影響をもたらし、東アジアのパワーバランスを崩し平和を脅かすことになれば、それは、高橋洋一氏が『愛国のリアリズムが日本を救う』のあとがきで述べているように「売国のお花畑論」となってしまう。 現実を直視し、理想と現実のギャップに気づき、両者のバランスを取りながら、理想を実現するためにも現実的な方策をとっていくことが肝要だ。 もっと言えば、愛国をベースとして、国際社会の現実を冷静に見つめながら、自国の発展と世界との協調を目指していくのが「愛国のリアリズム」の真髄なのではないか。 【4】に続く 文責=育鵬社編集部M
『愛国のリアリズムが日本を救う』 愛国に右も左もない。あるのは、日本に対する責任感だ! 左派リベラルの観念論を論破し、国益と政策的合理性の追求を解き明かした渾身の書 |
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