愛国のリアリズムで真贋を見分ける④――現実社会の応用問題が解けなかった鳩山首相

来日したオバマ米大統領と首脳会談を行う鳩山首相(2009年11月13日、首相官邸HPより)。鳩山内閣メールマガジン(11月19日)では普天間基地移転問題で、オバマ大統領に”Please trust me.”(私を信じてほしい)と言葉を交わしたと明記されている。

リアリズムが希薄な人がトップに立つ悲劇


 思い込みが強く、リアリズムの意識が希薄な人がトップに立つと、その組織は致命的なダメージを受ける。とりわけ、日本のリーダーである首相に、リアリズムが希薄な「地球市民志向の空想主義者」が就任すると、悲劇としか言いようがない。

「戦後の最悪総理大臣3人」高橋洋一氏のツイッターより

 歴代首相の中で、菅直人氏と「ワースト1、2位」を争う鳩山由紀夫氏(1947年~)がその典型的な例である。

 鳩山氏は、2009(平成21)年夏の総選挙で民主党が大勝し、自民党の麻生太郎内閣から政権交代を実現し、9月に民主党政権の首相となる。その直前の4月に、民主党幹事長として永住外国人への地方参政権の付与に関して質問された際に、「日本列島は日本人だけの所有物ではない」という、地球市民志向丸出しの答えを行い、また、沖縄の普天間基地の撤去・移設に関して「国外、最低でも県外」と断言した。(「ニコニコ生放送」4月21日)

 彼の経歴を振り返ってみよう。鳩山氏は、1965(昭和40)年東京大学工学部に入学し経営工学を専攻。卒業後はスタンフォード大学大学院に進み同大でPh.D.(博士号)を取得。専修大学経営学部助教授を務め、1986(昭和61)年に衆議院議員に。当初は自民党に所属していたが、1993(平成5)年に離党し、その後、1996年に菅氏らと民主党を立ち上げ、菅氏とともに共同代表に。ちなみに母方の祖父はブリヂストン創業者の石橋正二郎である。

 鳩山氏は政界きっての資産家といわれるほどの資金力で90年代以降の政界再編を主導し、その功績で首相になった人物である。つまり、母方のカネの力で首相になったために、自立ができていない。自立が出来ていない人間には、リアリズムの意識が欠落している。確かに学校でのペーパー試験だけはできたのだろうが、現実社会での応用問題が解けなかった。

 政策の目玉は、脱官僚依存を試み事業仕訳に挑み、高速道路の無料化を掲げたりしたが、どれもが中途半端で、頓挫したり実現できていない。

 一番の傑作は子ども手当の創設だが、当の本人が、大の大人になりながら母親から毎月1500万円の子ども手当をもらっており、政治資金規正法違反の疑いがあり、贈与であれば、半額ほどの贈与税を支払わなかった脱税の疑いが濃く、世間から失笑を浴びた。かくして2010年6月に退陣した。在任9か月にも満たない短命内閣であった。

 ここまでは、民主党に政権運営の能力がなかったことを証明しただけの話だが、沖縄の普天間基地の撤去・移設に関して、発言を二転、三転させ沖縄県民を愚弄したことは、許されざる大罪である。

沖縄の県紙『琉球新報』の凄まじい怒りの社説


 沖縄の県紙『琉球新報』は、2011(平成23)年2月14日の社説で次のように記す。

 政治音痴の素人政治家に、国政を委ね、安保・外交政策を左右されることの怖さに、身震いした。全てが浅はかな思い付きと行き当たりばったりの政権公約、理念と信念なき政策運営だったことが、あらためて明らかになった。鳩山由紀夫前首相が、本紙などのインタビューに答え、明らかにした普天間撤去・移設問題の“真相”のことだ。政治家の言葉の軽さ、政党の約束の無意味さ。(中略)
 鳩山民主党代表が普天間問題で、普天間飛行場の移設先は「国外、最低でも県外」と公約したのは紛れもない事実だ。だが、総選挙で大勝し、政権交代を実現するやわずか8カ月で「国外、県外はやはり無理」と、県内・辺野古案に回帰し、県民の怒りを買い、政治不信を招いた。辺野古回帰の理由を問われ「学べば学ぶほど(海兵隊や各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった」と語った。「海兵隊抑止論」が、沖縄に海兵隊の継続駐留を認め、普天間基地の辺野古移設を正当化する論拠とされた。だが、それから8カ月後、鳩山氏は「辺野古移設しか残らなくなった時に理屈付けしなければならず、『抑止力』という言葉を使った。方便と言われれば方便だ」と、あっさりと認めた。これほど言葉の軽い政治家を見たことがない。そして、自らの言葉に無責任な人も。政治音痴の素人政治家が国を動かし、国民を翻弄(ほんろう)し、政治不信を高める。万死に値する大罪だ。(後略)
 
 この社説の通りである。リアリズムを欠落した鳩山氏の「全てが浅はかな思い付き」「理念と信念なき政策運営」によって、今日なお普天間撤去・移設問題は迷走している。逆に言えば、「理念と信念の政策運営」が求められているのである。

 枝野幸男氏を代表とする立憲民主党の幹部たちは、当時の鳩山・菅直人、野田佳彦政権で主要な地位につき、辺野古移設を推進してきた経緯がある。再び手のひらを返しシラを切れば、沖縄県民のみならず、日本国民からも相手にされなくなる。この問題に関しては、政府と一体となって解決を図るべく、捨て身の覚悟が必要となる。
【5】に続く 文責=育鵬社編集部M

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