愛国のリアリズムで真贋を見分ける⑤――文部科学省を混迷させた前川喜平・元事務次官
応用問題を「解こうとしなかった」胸中は
そこで彼の著作『面従腹背』(毎日新聞出版、2018年6月刊)を読んでみた。読後感は一言でいえば、現実社会での応用問題が「解けなかった」というよりは「解こうとしなかった」という印象だ。そして、記述が至る所でちぐはぐなのである。以下、違和感を持った記述を引用し、それに関する感想を⇒で記したい。 「内心においていかなる法も規律も認めず、国家に従属したり国家の部分として存在したりすることを拒否するという意味において、私はアナキストだったとも言える」(24~25ページ) ⇒アナキストとは、無政府主義者の意味だ。無政府主義者であると自ら規定していながら、何ゆえに国家公務員を長年にわたり勤めてきたのかが理解不能である。 「この頃(1980年頃)の文部省の幹部たちは、自分の金では飲んでいなかった。我々も一銭も払ったことはない。すべて役所の金(引用者注、裏金)で飲んでいた」(32~33ページ) ⇒唐突にこの一文が記載されている。自慢話を書きたかったのか、あるいは悔い改めた反省なのか、意味不明である。悔い改めているのならば、今からでも遅くない。返金すればよいだけの話だ。 「むしろ私は、今回の指導要領は書き込みすぎだと感じている。最小限の記述に限る『大綱的基準』に回帰し、もっと教育現場の自主性に委ねるべきではないかと思う」(91ページ) ⇒今回改訂された新しい学習指導要領は、2017(平成29)年3月に告示されている。彼はその年の1月に天下り問題で事務次官を引責辞任しているが、その1月には指導要領の全文はほとんど出来上がっており、事柄の性質上、事務次官であった前川氏は事前に何度も報告や相談を受けているはずだ。なぜ、その時に言わなかったのか、理解不能である。 「私が文部官僚としてやりたくなかった仕事の最大のものは、2006年の教育基本法改正である」(135ページ) 「安倍内閣の下、改正法案が審議されることになったとき、私は国会対策の大臣官房総務課長になっていた。総務課長として各方面に法案の説明をしなければならず、法案の早期成立に向けての根回しなどを行った」(154~155ページ) ⇒本当にやりたくないと思っていたら、人事異動願いを出すなり、立ち振る舞いはいかようにもあったはずだ。 書き出していったらきりがないのでこの辺で止めておくが、すべからく「後出しじゃんけん」の印象をぬぐえない。 【6】に続く 文責=育鵬社編集部M
『愛国のリアリズムが日本を救う』 愛国に右も左もない。あるのは、日本に対する責任感だ! 左派リベラルの観念論を論破し、国益と政策的合理性の追求を解き明かした渾身の書 |
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