愛国のリアリズムで真贋を見分ける⑥――前川喜平氏を反面教師として、骨太の官僚を目指せ

高橋洋一氏は、【「日本」の解き方】で、文部科学省の新体制について言及した(『夕刊フジ』2018年10月23日号)

霞が関には骨太の官僚がいる

 かつて、外務省きっての論客と謳われた岡崎久彦氏は、田中角栄首相が全盛の時に、「日中国交回復は時期尚早である」との意見を述べ、見事に左遷人事を受けたが、自らの信念を貫き通した。また、高橋洋一氏も、小泉純一郎内閣と第1次安倍晋三内閣で、自らの考えに基づき、政府系金融機関の改革(統廃合)や公務員制度改革を行い霞が関の役人を敵に回し、自らの意思で財務省を退官している。  両者のその詳細については、本ニュースサイトの【異能・異端の元財務官僚が日本を救う】をご覧いただきたい。日本には岡崎大使や高橋氏といった、かくも骨太な官僚がいるにもかかわらず、後輩官僚に悪影響を与えた前川喜平氏の罪は重い。  高橋氏は、著書『愛国のリアリズムが日本を救う』の中で、文科省の混迷ぶりについて次のように記している。  (引用者注、今年の7月からの一連の文科省の汚職事件)の引き金は、前川喜平氏への処分の甘さが背景にあったのではないか。昨年の3月末、文科省の違法な天下り斡旋(あっせん)問題を踏まえ、前事務次官・前川氏の引責辞任など40人以上が処分され、当時、官房長であった容疑者(引用者注、佐野太氏)も厳重注意処分となっていた。  しかし前川氏は、違法な天下りに関して「私の責任はきわめて重い。文科省、政府に対する国民の信頼を揺るがしたことは万死に値する」(2017年2月7日の衆院予算委員会)と口先では陳謝しながらも退職金(推定5600万円)はしっかりといただき、その後は加計学園問題で「行政は歪められた」と証言し、一部のマスコミからもてはやされている。今回の不祥事はこのことに起因しているのではないか。  省庁において、官房長は省内人事を司るなど重要な役職であるため事務次官との関係が密接であり、その後の前川氏の動向をつぶさに観察していた局長は、違法な天下りの斡旋をしても、退職金はしっかりともらえ、その後、お気楽に講演活動ができるならば、自分の息子への点数の加算など、罪が軽いと思ったのではないか。  つまり、前川氏への処分が甘かったのである。国家公務員が再就職する場合、その求職活動に省庁が直接関与してはならないという法律があるにもかかわらず、文科省の場合は、①これに明確に違反し、さらに②法律施行後も、OBと人事課や最高幹部とが結託した再就職先紹介ルートが存在し、③この違反行為が明るみに出た際に、再就職等監視委員会に虚偽の説明を捏ねつ造ぞうして行った……という罪の重い行為であった。  本来ならば、組織ぐるみで違法行為を行っていた事務次官の前川氏は懲戒解雇されるべきであった。百歩譲って依願退職としても、少なくとも退職金は自主返納させるべきであり、通常はこうした点こそマスコミは追及するはずが、そうなっていないのは不思議極まりない。(30~31ページ)

「文部科学省における再就職等問題に係る調査報告(最終まとめ)」平成29年3月30日の参考資料から。赤色囲みが歴代の事務次官、貴色囲みが歴代の官房長。前川氏が次官の時に、佐野太氏は官房長を務めていた。

ひたすら既得権益を守ろうとする「守旧派」

 また、2004年に発足した規制改革・民間開放推進会議(以下、規制改革会議)において、翌2005年に教育改革が俎上に上った時、そこに呼ばれた文科省初等中等教育課長だった前川氏が、やくざまがいの言葉を発して問題を起こしたことがある。これに関して、前掲書ではその一部始終を速記録から紹介し、次のように述べる。  上述の規制改革会議委員とのやり取りを見ていると、前川氏は日本の教育を守るのは自分たち文科省であり、教育の素人が口出しをするなと言いたげな剣幕ぶりであり、相当に思い込みの強い人物と見受けられる。  教育制度の効果測定という実証的なデータを出せば、事実に基づきより議論が深まり実効性の高い改革ができるのに、それをことさら拒否する。まえがきに記した「銀行ムラ」と同じく「教育ムラ」に住みつき、既得権益から抜け出せないように思える。だからこそ、天下りは役人の既得権益であり、天下り斡旋が違法になっているにもかかわらず、平気で違法行為に手を染める。  また、大学の許認可は文科省の専権事項とばかりに既得権益にしがみつき、西日本で獣医が不足している現実に目を向けずに、獣医学部の新設の申請も嫌だったと、後出しじゃんけんよろしく「行政が歪められた」と言う。  前川氏は文科省の課長時代、自らのブログ(「騎兵隊、前へ」)で、「クビと引き換えに義務教育が守れるなら本望である」と勇ましい言葉を記している。  獣医学部は義務教育とは異なるが、それだけの覚悟があって本当に文科行政が歪められたと思ったならば、事務次官という事務方のトップの立場にいたのだから、辞表と引き換えにそれを阻止すればよかっただけの話であろう。  それをせずに、自分の人生訓は「面従腹背」と述べていた。このような人物が文科省の事務方の責任者に登りつめたことは、文科省という官庁の哀れさである。(前掲書、42~43ページ)  まさに時代が行政改革、教育改革を求めているのに、前川氏はその現実を直視せず、ひたすら既得権益を守る「守旧派」に自らを位置づけている。リアリズムの意識が希薄すぎる。  文科省では現在、課長クラスを中心に、リアリズムに基づきいかに日本の教育を改革していくかという優れた人材が育っている。高橋洋一氏は、冒頭の画像にある夕刊フジの記事で、藤原誠新次官の訓示を紹介している。この新体制の下で、前川氏を反面教師として、骨太の文科官僚が輩出されることを願ってやまない。(了) 文責=育鵬社編集部M
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