東大入学式の祝辞で絶賛された上野教授への違和感

東京大学

フェミニズム研究のパイオニア

 4月12日に行われた東京大学での入学式で、上野千鶴子名誉教授の祝辞が話題になっている。上野氏はフェミニズムやジェンダー研究の草分けの社会学者で、日本社会における女性の地位と権利の獲得を目指し、差別や人権問題にも言及してきた第1人者だ。  祝辞の内容は、男女差別の現状を示し、多様な生き方を認める社会とはいいがたい日本社会の体質と、現在の東大生の意識にも同様の体質が存在することに警鐘を鳴らすというものだった。  そして、学生に対して、「勝ち抜くことだけが目的となるような人間ではなく、弱者へのまなざしを向け、エリートとしてその能力を社会へ還元することを願う」という激励の言葉も併せて伝えていた。  上野名誉教授の祝辞は、入学式での発言だからこそ大きな反響を呼び、多くのマスコミ人が上野氏に共感した。それゆえ、この祝辞は主要メディアだけでなく、様々な形で広く取り上げられることになった。  そんな上野氏だが、じつは過去に出版した本の中で、「ゲイ」に対して差別的に批判していたことはあまり知られていない。森口朗著の『左翼老人』から、その部分を引用してみる。

過去にはゲイ批判も

「左翼系学者では『おひとり様』で有名になった上野千鶴子氏が、ホモセクシャルに差別的でした。本人はそれを隠さず『女という快楽』(勁草書房)の中で『ホモセクシャルは、多様で自然な愛のかたちの一つにすぎない、というものわかりのよさそうな意見に与しない。  なぜならホモセクシャルは繁殖に結びつかないばかりでなく、異質なものとの交配という種が強いた自然を、心理的に裏切ろうとする試みだからである』として自ら『ホモセクシャルを「差別」する』と断言しているのです。  ただし、日ソの共産党が本気でホモセクシャルを嫌っていた1986年の本では本気で差別していましたが、ソ連が滅び、日本共産党がホモセクシャルに物分かりが良くなった2006年(新装版)では『歴史的な文言』と言い訳しながら残したのでした」  昨年の「新潮45」騒動での「LGBT」問題で、杉田水脈議員が使った「生産性がない」との表現が差別的だと、杉田氏は大批判を受けたのだが、森口氏は杉田発言と上野発言を比較して、こう続ける。 「杉田氏の論文内容には差別的意図を感じませんが、上野氏は差別を明言していたのです。しかもその理由は非生産的(上野氏の言葉では「繁殖に結びつかない」)だけではなく、裏切りだからだと主張したのです。  それでも上野氏はまったく批判されませんでした。日本のメディアや学会がどれほど左翼に独占されていたかが分かるはずです」  森口氏が上野氏の過去の発言と杉田氏の現在の発言を同列に論じているが、それは左翼主義者のご都合主義を批判するためだろう。  さて、上野氏は祝辞で「フェミニズムは弱者が弱者ままで尊重されることを求める思想」とも述べた。昔の本とはいえ、『女という快楽』の内容を知った人は、今回の上野氏の祝辞をどう捉えるのだろうか。 参考:『左翼老人』森口朗著(扶桑社新書)
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