共産党と天皇

新元号を追認

 世論調査では、概ね国民の7割近くが支持する新元号「令和」。新元号に対しては各政党が談話を発表したが、改めて共産党の見解を見ていきたい。  志位委員長は令和発表に際して「国による元号の使用の強制を反対」と述べるとともに、一方では、「国民が元号を慣習的に使用することに反対しない」とも述べた。  それに加えて、元号については「今、廃止すべきという立場にたっておらず、将来、国民の総意で解決される問題」との認識を示した。  これは、党として、「原則反対」の立場を維持しながらも現状を肯定するというニュアンスを込めたのだろう。そうはいっても、マスコミ各社は志位委員長の発言から「元号が国民主権になじまない」という点を強調して報道した。  また、5月9日に衆議院で行われた天皇陛下の即位を祝う「賀詞」に関しても、共産党は反対の行動はとらず、賀詞は全会一致で可決された。  歴史を振り返ると、昭和から平成にかけては、元号は当然として、新天皇の「賀詞」にも、まだ共産党は反対の立場を表明していたのだ。  そもそも、元号法が国会で制定された昭和54年での共産党の談話は、金子書記局長が「軍国主義復活・強化のたくらみと軌を一にし、天皇元首化・憲法改悪などの反動的策動の一環をなすものであり、憲法の主権在民原則に反する」と発言するように、その立場は鮮明だった。  そして、天皇陛下が臨席する国会に関しては、ずっと出席しないままでいたのだが、2016年の通常国会の開会式には、第1回以来、69年ぶりに出席をした。

国民の意識と支持者の意識

 天皇に対する党のスタンスも「現実的」に変わってきているのだろうが、それは、元来の主張を貫くと、国民との意識のずれが大きくなるのを懸念したからとも推測される。  例えば、元号に関しては「令和」について7割が賛成だということは、最初に述べた。ただし、3割は令和に賛成していないからといって、彼らが全員共産党の支持者というわけではない。  常識的に考えると、共産党の支持者、あるいは共産党に投票する人たちが全員、元号に限らず、天皇制には絶対反対とは限らない。  よりソフト化路線を進めることで支持者を増やしたいというのは、逆にいえば党に対する支持者離れに対する危機感の表れでもあるのか。  もっとも、共産党が選挙において野党共闘を目指すのであれば、この先もソフト化路線を進めていくことで原理主義的な支持者とのあいだで、対立が起こることも予想されよう。 参考:『左翼老人』森口朗著(扶桑社新書)
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