日本を本当に豊かにするためのプロジェクト⑥

活力ある国

活力ある国とない国

 さて、こうした「活力ある国」と、「活力のない国」、わが国日本は一体、現在どちらの国なのだろうか?  主要先進国であるG7に、隣国韓国を加えた各国の、政府によるインフラ投資額の推移を示した数字からみてみよう。  平成8年(1996年)を基準としたグラフを見れば一目瞭然なように、わが国一国「だけ」が、インフラ投資額を過激に削減し続けている。日本を除くあらゆる国家が、過去約20年の間インフラ投資額を増額させている。  アメリカは2倍に、カナダ、イギリスに至っては3倍前後もの水準に、投資額を拡大させている。ところが、わが国日本は増加させるどころか、「半分以下」にまで削減し続けているのである。  これでは、インフラとスープラの循環は諸外国に比べて圧倒的に停滞し、インフラのイノベーションを通した経済や社会、文化等のスープラのイノベーションなどほとんど起こりようがないのも当然だ。

日本だけが衰弱

 その結果、わが国一国「だけ」が衰弱していくことになったのである。  また、世界各国の名目GDP(ドル表記)の推移を示した数字をみても、インフラ投資を右肩上がりに拡大し続けた諸外国においては、それに歩調を合わせるように名目GDPもまた一貫して増加し続けている。  過去20年の間に、アメリカもヨーロッパも成長し続け、名目GDPは2倍以上に拡大している。それ以外の国々はさらに成長しており、トータルとして3倍以上の水準にまで名目GDPは拡大している。  ところが、インフラ投資が停滞し始めた90 年代中盤から、わが国一国だけが成長できなくなり、名目GDPは「停滞」し、「縮小」している様子が見て取れる。  もしも世界中が日本と同じように停滞しているのなら、それはそれで致し方ないことかもしれない。しかし数字の変化を見れば、日本以外はすべての諸外国において経済は成長し続けているのである。  これはつまり、日本の相対的国力が過去20年の間に急激に凋落してしまったことを意味している。  実際、名目GDPの世界シェアは、1990年代後半においては2割近くの水準に達していたにもかかわらず、今日においては5%台にまで急速に凋落してしまっている。  こうした事態も、インフラ投資を愚かにも半分にまで縮退させた必然的帰結──と言わざるを得ないだろう。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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