「コラーゲンでお肌プルプル」は気のせい? 「ニセ医学」ハマり度チェック

<文/桑満おさむ・五本木クリニック院長・ニセ医学バスター>

「コラーゲンでお肌プルプル」は気のせい?

 フカヒレやコラーゲン鍋を食べた翌日、「肌がいつもよりプルっとしてる気がする!」と言っている人が、あなたの周りにもいると思います。これは果たして本当でしょうか?

(イラスト:さとうただし)

 コラーゲンは人間にとってとても重要な成分であり、肌の弾力を支える成分のひとつです。しかし、コラーゲンを摂取しても、体の中でコラーゲンとは似ても似つかない物質にまで分解されてしまいます。  それでも「コラーゲンを作るための原料になる」と言われるかもしれませんが、コラーゲン由来のアミノ酸であるヒドロキシリシンやヒドロキシプロリンは、ほとんどが尿となって体外に排出されます。一部は体内でたんぱく質を作る原料になりますが、血管や骨を構成する材料としても使われるので、都合よく肌だけをプルプルにしてくれるはずがありません。  しかも、肌が生まれかわるターンオーバーには約1カ月かかります。それなのに、前日に食べたコラーゲンで肌がプルっとするわけがありません。    それでも本当にプルっとしていると感じるのであれば、フカヒレ料理で大量に使われる塩のせいで顔がむくんでいるか、たっぷり使われた油のせいで肌がギトギトしているかのどちらかでしょう。

プラセボ(偽薬)効果とは

 それでも、「私は効果を感じている!」という人もいるかもしれません。しかし、あなたのその実感、おそらくプラセボ(偽薬)効果でしょう。  プラセボというのは、効き目のある成分は何も含まれていない「偽」の「薬」です。開発中の薬の効き目を調べるときに、本当の薬を飲んだグループとプラセボを飲んだグループとで比較するために使われたりします。  なぜそのようなことをするかというと、「この薬を飲めば治る」と思うだけで症状がよくなる人もいるので、開発中の薬がプラセボ以上に効き目があるか調べるのです。  プラセボのような「思い込み」は薬以外のことでもよく起こります。「コラーゲンでお肌プルプル」なども、まさしくプラセボ効果です。 「そんな効果がないものを売ってもいいの?」と疑問に思うかもしれませんが、コラーゲン食品の宣伝をよく見てみてください。「たるみが治る」「肌が若返る」など、直接的に効果効能をうたってはいません。きれいな女性が出てきてコラーゲン食品をとったあと、肌を触りながら「プルルン」など弾力を思わせる言葉を言っているだけのはずです。これは健康食品やサプリメントの宣伝の常套手段です。たとえば、花粉症に効くと思わせたければ、「春先のズルズルに」とか、便秘によいと思わせたければ、「毎朝スッキリ」など、ぼんやりした言葉で効能をイメージさせます。

テレビは今もニセ医学が花盛り

 私たちの周りには、たくさんのニセ医学がはびこっています。「ニセ医学」というのは、文字通り、「偽物の医学」です。偽物と本物の違いは、科学的根拠があるかどうか。つまり、ニセ医学には科学的根拠がありません。「肌が若返る」「高血圧が治る」「がんが治る」など、さまざまな効果をうたい(イメージさせ)ながらも、科学的根拠を示さないのがニセ医学です。  しかし、テレビも新しい情報、センセーショナルな情報を求め、結果、小さなトピックを盛りに盛って紹介したり、スポンサーに配慮した偏った情報を流すなど、ニセ医学に加担しています。  このような例は「メジャーなニセ医学」といえるでしょう。マスメディアは影響力が大きいため、間違った情報が広がりやすいのが問題です。  十数年前、健康情報番組がブームになったときがありました。各局がこぞって簡単なダイエット法や、よりセンセーショナルな健康情報を流そうとしのぎを削った結果、行われたのが悪質なヤラセです。  医者に取材をして自分たちに都合のよいところだけを抜粋して使い、ダイエット結果なども改ざんし、バラエティ感覚で健康情報を編集していたのです。  情報も不十分だったため、番組の情報を取り入れて健康を害した人が続出しました。それが問題となって人気番組が終了し、健康番組ブームもいったん下火になりました。しかし現在、再びブームになっています。  とはいえ、過去の大バッシングの経験を経て、今はそこまで悪質な情報はあまり見 ません。「本当かよ」とツッコミたくなる程度で済む場合がほとんどです。  そういった情報もニセ医学ではあるのですが、私は科学的根拠がないものはすべて排除すべきだとは考えていません。おばあちゃんの知恵袋的なものは大好きですし、ヘンテコな治療法でも、苦しんでいる人の役に立つのであれば、何ら文句はありません。

ニセ医学にハマる人の特徴

 それよりも近年、私が危ぶんでいるのは、インターネットを中心に広がる反医療の「マイナーなニセ医学」です。といってもイメージが湧かないと思いますので、簡単なチェックをしてみましょう。 [ニセ医学ハマり度チェック] □合成添加物を毛嫌いし、レトルトやインスタント、冷凍食品は食べない。 □ワクチンを打たない、子どもに打たせない。 □皮膚炎がひどくなってもステロイドは絶対に使わない、子どもにも使わせない。 □出産後は完全母乳にこだわる。 □必要以上に放射能を怖がる。 □電磁波を嫌う。 □先の6項目のようなことを自分が気をつけるだけでなく、周囲にも押しつける。 [チェック数]    0個 大丈夫。ニセ医学にハマっていません。 1~3個 すでにニセ医学にハマっています。 4~6個 ニセ医学にドハマりです。 7個 もはやニセ医学の信者です。  ニセ医学にハマっていませでしたか。また、周りに思い当たる人はいませんか。  ニセ医学にハマっている人は、総合していうと、言葉は悪いかもしれませんが、「ヒステリックな自然派」といえます。  自然派の人は世の中にたくさんいます。なるべく自然な環境で育ったものを食べたいという思いも、自然に分解される素材のものを使って環境を守りたいという思いも、共感する人は多いでしょう。いわゆる「ていねいな暮らし」をしている人たちです。    ニセ医学にハマってしまった人たちも同じようなところからスタートしたはずです。それなのに、なぜ自然派をこじらせてヒステリックになってしまったのでしょうか。  私たちは何かを調べるときに、最初はインターネットを活用するのが主流でしょう。自然派をこじらせるタイプの人は、自分の考えが正しいという視点でスタートするため、賛否両論を比較して公正に判断しようとはしません。たとえば「合成添加物が危険なのではないか」と思ったら、「合成添加物がいかに危険なのか」ということだけを調べてしまうのです。  ご存じのように、ネットの情報は玉石混淆で、トンデモない嘘がたくさんあります。ですから、情報を調べるときは、公的機関のホームページなどを当たるようにしましょう。そうすれば正確な情報が簡単に手に入ります。 桑満おさむ(くわみつおさむ) 五本木クリニック院長。ニセ医学バスター。1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に開院。“日本一の町医者”を目指し、地域密着型のクリニックを展開。またネットなどにはびこるニセ医学に危機感を抱き、エビデンスを用いて軽快かつ辛辣に論破していくブログで話題。NHK『チコちゃんに叱られる! 』(2018年6月29日放送)にも登場するなど、活躍の場を広げている。最新刊は『“意識高い系”がハマる「ニセ医学」が危ない!』(育鵬社)。
“意識高い系"がハマる「ニセ医学」が危ない!

◎岩盤浴でデトックス! ◎コラーゲンで肌プルプル! ◎合成添加物入り食品は食べちゃダメ! ◎がんは放置し、治療しない! その方法ではよくなりません! ネットやSNSに飛び交うウソ情報にダマされないコツを伝授!

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