港の整備が「まち」を作る: 小名浜の港湾イノベーション2

福島、首都圏、日本にとって重大な意味を持つ小名浜港

 小名浜は、福島県の海岸に位置する港湾都市である。おそらくは、ほとんどの読者がこの港の名前すら聞いたことがないのではないかと思う。  かつてこの小名浜は、小さな漁村に過ぎなかった。しかし今やそれは、福島にとってのみならず、東京都市圏全域にとって、さらには、日本国家にとって枢要な産業・エネルギー拠点の一つとなった港湾都市である。  小名浜港は政府によって東日本唯一の「国際バルク戦略港湾」に選定され、石炭輸入にとって国家的な最重要港湾に位置付けられると同時に、福島の経済発展、復興のシンボルとなっている。  それとともに東日本の石炭火力発電所にとって必要不可欠な存在でもある。とりわけ、首都圏内の発電所が軒並み停止してしまうであろう巨大災害時の電力源として、小名浜関連の火力発電所群(発電能力総計555万kw)は「命綱」ともいえる存在となっている。  実際、首都圏の全電力使用量の実に3割程度を福島県だけで担っていたが、小名浜港からの石炭を利用している火力発電所群は、福島県での発電の大きな部分を担っている。  そして今、小名浜港では国内「最大」となる水深18mの公共岸壁の整備が進められ、東日本を中心とした国内の石炭火力発電所への石炭輸入をさらに大規模に引き受ける準備が進められている。  これにより、福島県内にさらに多くの石炭火力発電所の立地が促され、それを通して首都圏への電力供給力が増強される見通しだ。

観光資源としても活用

 さらにはこれらと並行して、小名浜にはさまざまな化学プラント等の工場の立地が進み、かつ、観光資源としてもその港湾施設が活用されるに至っていることも付言しておこう。  つまり、小名浜は、かつての小さな漁村から今日の近代重要港湾地域へと、完全な構造転換=イノベーションを果たしたのである。  そして、そのイノベーションの帰結として、小名浜港は今、福島、首都圏、そして日本全体にとって枢要な役割を担う重要港湾へとさらなる進化を遂げているのである。  ではなぜ小名浜港は、日本、とりわけ首都圏にとって重大な意味を帯びる、このような「イノベーション」を果たすことができたのだろうか。  もしもこの点が明らかにできるのなら、日本中の港街に小名浜のような抜本的なイノベーションをもたらし、「真の地方創生」を考えるための重要なヒントが得られるに違いない。  ついてはここでは、その点を考えるためにまず、小名浜発展の経緯を、詳しく振り返ってみることにしたい。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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