「下水資源」イノベーション: 都市に眠る宝の山2

「下水資源」イノベーション

 そもそも「自然界」では、太陽エネルギーに駆動される形で「水」が絶えず循環している。  そして、自然界の一部を構成する人間界における水循環もまた、巨大な自然界の水循環の一部を構成している。 自然界から人間界への流れは一般に「上水」と呼ばれ、その逆の流れは「下水」と呼ばれる。  人類は「上水」において自然界の水を飲料等が可能な水準の質に改善したうえで人々に届け、「下水」において人間活動によって汚染された水が自然界を汚染しない程度の質にまで改善したうえでその水を自然界に返す、という営みを営々と続けてきた。  これと並行して人類は、水力発電等の形でこの水循環をさまざまに活用してきた。  すなわち「下水」を資源として活用し、エネルギーを取り出すという取り組みもまた、自然界の巨大な水循環の一部を活用しようとする取り組みの一つなのである。  もちろん、こうした発想の萌芽は前近代に見いだせる。  農業のための肥料としての活用がその典型だ。しかし近代社会において導入された「下水」システムにおいては、もっぱら「処理」に重点がおかれ、必ずしもその「活用」は十分には進められていなかった。  そんななか、近年のさまざまなイノベーションを経て今、その可能性が急速に拡大しつつある。  そもそも85兆円もの資産価値を持つ巨大な下水インフラにおいて日々大量の下水が処理され続けていることを踏まえるのなら、下水を上手に活用することで、大量の資源、エネルギーを抽出することが可能となることは明白なのである。

下水「天然ガス」エネルギー

 下水エネルギーの中でも、いち早く活用されてきたのが「メタンガス」である。そもそも下水では大量のメタンガスが発生する。  これを廃棄物としてそのまま大気中に放出すれば、CO2よりも20倍超もの影響をおよぼす悪質な「温暖化ガス」となってしまう。  しかしこれを資源と見なせば貴重な「天然ガス」エネルギーとなる(したがって、下水から排出されるメタンガスを天然ガスとして有効利用するということはすなわち、地球温暖化対策としても重要な意味を持つ、ということになる)。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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