「下水資源」イノベーション: 都市に眠る宝の山3

下水「天然ガス」エネルギー

 実際、下水処理場が作られるようになった当初、このガスの多くがただ単に捨てられ、地球温暖化の進展に貢献してしまっていたのが実態だった。  しかし、それでは「もったいない」とばかりに活用されるようになっていった。最初にそれが活用されたのが、そのガスを「燃やす」というものだった。  そもそも、下水処理において「効果的」にメタンガスが得られるのは、下水処理の過程で「発酵」のプロセスが用いられる場合だ。このプロセスは全国に2200ある下水処理施設のうちの約300施設において採用されている。  この300の施設においては、下水を沈殿させた結果得られる汚泥を発酵させた時に高い濃度のメタンガスを含んだガス(以下、「バイオガス」)が発生する。

下水からできるバイオガス

 この「バイオガス」は当初、それを作る「発酵プロセス」の促進それ自体に自己利用されるようになっていった。バイオガスを燃やして汚泥を温め、発酵を促進させたわけだ。  これに加えて、下水処理の最終プロセスで行われる焼却処理にも一部活用されていった。  つまり下水処理場は、その下水自体を「再生可能エネルギー資源」と見なし、それを活用することで駆動されるようになっていったのである(一般に、こうした利用は、オンサイト利用、と言われる)。  いうまでもなく、もし、この自己生産されるバイオガスを使わなければ外部から電力やエネルギーを持ってくることが必要となる。  したがって全国の多数の下水処理場におけるバイオガスの活用は、国家スケールのエネルギー政策として重要な意味を持つ。  ただしこのバイオガスは、下水処理場だけで使える量を上回る分が、常時、発生しているのが実態だ。結果、すべてのバイオガスのうち、発酵促進や焼却のために活用されているのは半分程度に過ぎない。  これは誠にもって「もったいない」話だ。ついてはさらにこのガスの有効利用を目指して行われたのがバイオガスの「オフサイト利用」だ。  これはバイオガスをさらに精製し、下水処理場外でさまざまな用途に汎用できる「天然ガス」として活用する方法。例えば現在では、長岡市や金沢市、神戸市で、こうした下水から作られた「天然ガス」が北陸ガスや自治体の企業局、大阪ガスに販売されるに至っている。  つまり天然ガスは必ずしも外国から輸入せずとも、都市の足下に眠る下水インフラから、取り出すことができるのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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