「下水資源」イノベーション: 都市に眠る宝の山5
下水道から電力を作る─ (2)汚泥燃料火力発電
天然ガスは、下水から得られる極めて有力な資源だが、それは下水から得られるさまざまな恩恵の一つに過ぎない。 しかもそもそも上述のメタンガス発電が可能なのは、汚泥を発酵させるプロセスを採用している全体の七分の一程度の300施設においてだけ。 一方でいずれの施設においても発生する「汚泥」は、いくつかの特殊なプロセスを経ることで火力発電を行うための「汚泥燃料」に作り替えることができる。 例えば、宮城や広島や福島、福岡では、特殊な製法で「粒状」に加工したり「炭化」させたり、廃食用油等を混入させたりするなどの方法を通して作った「汚泥燃料」が、実際の商用の火力発電機の燃料として活用されている。 こうした「汚泥燃料」火力発電は、上述のガス火力発電よりもいまだ実績は少なく、現時点で全国で13カ所(平成27年度末)と限られた状況ではあるが、膨大な量の汚泥が日々生じていることを考えれば、そのイノベーションをさらに重ね、普及していくことは重要な課題だ。下水道から電力を作る─ (3) 水力発電
一方、再生可能エネルギーの一つとして現在注目を集めているのが「小水力発電」である。これは、巨大ダムの建設を伴う大水力発電とは異なり、我々の国土を流れるさまざまな水の流れを活用してタービンを回し、発電するというもの。 言うまでもなく下水道システムでは日々大量の水が流れている。今、その下水における水の流れを使った小水力発電を行う機材が商用販売され、その適用が徐々に拡大しつつある。 下水道の流量は安定していることから、天候に左右されない安定電力の一部として期待されている。下水の「熱利用」
以上に加えて、下水の持つ「熱」を直接活用する方法も今、大きな注目を集め始めている。 これは下水の処理プロセスで出てくる処理水(あるいは、下水それ自体)が、通常の外気温よりも「高い」ことに着目し、それを特定の装置(熱交換装置等)を使って取り出し、空調や路上の融雪等に供給していく、というものである。 (なお、夏においては逆に、下水の温度の方が「低い」というケースもあり、それを活用した冷房装置も考案されている) この熱利用は天然ガス生成のような複雑なプロセスを経ることもなく比較的容易に導入できることから、その適用範囲は広く、ポテンシャルは実に大きい。 ただし今、東京のソニーシティや後楽園地区、札幌、新潟等の各自治体等、その活用事例は着実に増加しつつあるものの、全体としてみればその適用は限られているのが実状だ。 今後のさらなる普及が、エネルギー政策の観点から今、強く求められている。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。ハッシュタグ
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