「下水資源」イノベーション: 都市に眠る宝の山7

さまざまな活用方法: 肥料と建設資材

 以上、主として下水のエネルギー活用に着目した新しいイノベーションを論じたが、下水はさらに多くの可能性を秘めている。  そもそも日本古来そう活用されてきたように、現代においても下水は農業における「肥料」に活用されている。  今、下水が持つ総有機分(バイオマス)のうちの約1割が、この肥料を中心とした緑農地用に活用されている。  以上に論じた「バイオガス」は下水の総有機分の1割強、汚泥燃料はそのたった1・8%にしか相当しないものであることを踏まえれば、この肥料としての有効利用は下水が持つ大きなポテンシャルの一つだ。  そして今、特に大きな注目を集めているのは「リン」だ。リンは肥料等としての価値が高く、海外から年間40万トン程度の輸入までしている。  そして適切な下水処理をすれば純度の高いリンを取り出すことができることが知られている。したがってこれを効率化すれば、下水からのリンを「国産資源」として活用し、リンの輸入を削減することにつなげることが可能となる。  例えば今、その「六分の一」に相当するリンが下水道に流出していると言われている。これを有効利用することができれば、日本は年間176億円相当のリン(リン酸肥料換算)を輸入する必要がなくなり、肥料の自給率を高めることが可能となる、と言われている。 とはいえ、下水からのリンの抽出は近年始められたばかり。その大半がやはり、そのまま捨てられているのが実態である。

下水資源の有機分の四分の三が未利用

 このように近年のさまざまなイノベーションを通して現在、「有機分」として有効利用されている割合は徐々に増えてきてはいるのだが、トータルとして言うなら、有効利用されているのは総有機分のわずか25%に過ぎない。逆に言うならその75%が有機分として未利用のままなのである。  政府は今この利用率における「エネルギー利用率」(バイオガスならびに汚泥燃料等での利用率)に焦点をあて、平成32年までにこれを30%まで上昇させるために各種施策を展開することを閣議決定しているが、その目標を達成するためにも、効果的な施策展開を必要な財源を投入しつつ本格的に進めることが必要だ。  なお、下水には「無機物」も含まれることから、そうしたものも含めて下水汚泥の半分程度は建設資材等にも活用されている。  ただし、こうした「無機物」としての利用よりも、有機物は有機分として活用した方がはるかに高い付加価値を生み出すことができる。  ついては、今後はやはり上述の有機分としての活用率の上昇が国家にとって強く求められている。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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