「下水資源」イノベーション: 都市に眠る宝の山8

都市に眠る宝の山

 日本は確かに資源の乏しい国。だからわが国の国家繁栄のためには、海外からの輸入資源確保のための「外交」や「外貨獲得」が必要不可欠である──と、広く国民の間で共通認識されている。  しかし、そんな努力を図る以前に、国内での資源・エネルギーの開発が可能であるのなら、それにより多くの国力を投入することの方がより合理的であることは明白だ。  つまり、「国内での資源確保」はわが国の存続と繁栄のために、超一級に重大な意味を持つ取り組みなのである。  そうした視点に立ったとき、ネガティブな処理対象に過ぎない文字通りの汚物として見なされ、表舞台で論ずることを忌避されてきた下水は、まさに「宝の山」なのである。  その大都会の足下に眠る「宝の山」である「下水資源」に一手間、二手間かければ、次のような実に多様な資源・エネルギーを抽出することが可能となるのである。  ・天然ガス  ・電力 (ガス火力、石炭火力、水力等)  ・水素  ・熱利用  ・リン等  そして実際、こうした数々の資源・エネルギーを取り出すための技術が、今日の数々のイノベーションを通して具体的に開発され、その商用活用が具体的に全国各地で始められているのは、以上に論じた通りだ。  しかし本稿で一つずつ確認したように、都市に眠る下水資源のポテンシャルは、いまだ十分に活用されていないのが実態だ。  比較的昔から活用されてきたバイオガスですら、せっかく「ガス」として抽出できているにもかかわらずその四分の一がムダに捨てられている。  そして、下水資源が持つ有機分(バイオマス)全体に着目すれば、75%がいまだ利用されないまま放置されているのが現状だ。

国策で下水資源の活用を推進

 そんな中、政府はようやく重い腰を上げ、下水資源である有機分活用の拡大を、国策の一つに据えようとしている。  平成28年11月、国土交通省は、彼らが主体的かつ具体的に進めるプロジェクトの一つとして「下水道イノベーション~日本産資源創出戦略~」を掲げるに至っている。  資源のない国日本──この常識を覆し、日本の国益を可能な限り効果的に最大化していくためにも、我々はさまざまなイノベーションと、そのための研究開発・普及促進のための投資を進めなければならない。  そうした国家的事業の中で、「都市に眠る宝の山」である下水資源の活用は、最も重大な戦略の一つであることは間違いない。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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