鉄道が導く「都市と国土のイノベーション」2

交通の持ち来たす変革は「最も根深く強い」

 政府は改革を叫び、イノベーションの重要性を謳い、経済や産業や財政や教育で抜本的な超変革を目指すのだと躍起になっている。しかし政府は忘れているのだ。  我々の社会の基盤にある「下部構造=インフラストラクチャー」こそが、経済や産業や財政や教育の実態を決定付けているという「真実」を。  交通インフラなかりせば、あらゆる産業は発展せず、したがって経済も衰弱し、結果として財政は劣化し、それらの暗い世相すべてを受けて教育も荒廃していく。  足下をおろそかにして、見栄えばかり気にする輩やからは、足をすくわれ、落ちぶれていく他ない。  それぞれの地域、さらには国家全体の栄枯盛衰の歴史は交通インフラが決定付けているのであり、都市と地域と国土の有り様は交通インフラによって決定付けられているのである。  だからこそ、都市や地域、そして国土、ひいては社会全体の「イノベーション」を謳う以上は、交通インフラ政策を無視することなぞ「言語道断」である。  そればかりか、その他の経済産業政策や構造改革なるものと交通インフラ政策を同列に扱うこと自体が愚かの極みとすら言っても決して過言ではない──それほどに交通インフラ政策は重大な意味を持つ政策なのだ、と我々は構えねばならない。

都市・地域・国土の形成と繁栄における鉄道の役割

 交通インフラといっても道路もあれば港もあれば鉄道もある。ただしこれらの中でもとりわけ、「都市」の形成において重大な役割を担うのは鉄道だ。  なぜなら、道路や港は、主として「物流」のために必要不可欠な役割を担う一方、鉄道は、「人流」にとって中心的な役割を担うからである。そして、都市の形成においては、「人流」の活性化が枢要な役割を担うのである。  もちろん、道路や港も「人」を運ぶ上で重大な役割を担う。しかしその「規模」でいえば、少なくとも人流においては鉄道がやはり断トツに効率的だ。道路で大量の人を運ぼうとすると渋滞は避けがたいが、鉄道はそうではない。  港(港湾あるいは空港)についていうなら、少なくとも中距離、近距離の日常的な移動においては、(臨海部や離島等の一部の例外的な状況を除けば)鉄道に圧倒的に分がある。  かくして、鉄道が導入された近代以降、都市の形成と発展において鉄道の存在が重大な役割を担い続けてきたのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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