日本を救う水力発電イノベーション2

水力発電こそ、最も優良な再生可能エネルギー

 自然の力を借りて行う「太陽光」や「風力」などによる発電は「再生可能エネルギー」と言われており、近年、その普及拡大が国家的なレベルで精力的に進められている。  だが、水力発電も またもちろん「再生可能エネルギー」に位置付けられている。  ただし、さまざまな再生可能エネルギーの中でも、水力は「ずば抜けて」優良な発電であり、その開発の歴史も、他の再生可能エネルギーとは全く異なり、古く長い。  その第一の理由が、水力発電は、さまざまな再生可能エネルギーの中でも、段違いに大量の電力を供給できる、という点にある。  そもそも、「自給している電力」のうち、風力や太陽光、地熱などが占める割合はごくごく一部である一方、その大半が水力なのである。  つまり、大規 模かつ実質的に日本の経済や社会を支えることができる再生可能エネルギーは、現時点では水力発電をおいて他にはないのだ。 第二に、風力や太陽光等での発電量は、天候に大きく左右されてしまい、安定的な電力供給 が不可能である。  それ故、電力供給にあたっては、風力や太陽光の電力の増減にあわせて、他の発電所の発電量を調整する必要がでてきてしまう。  したがって、それらの発電量が増えれば増えるほど、今まで必要ではなかった余計な「調整コスト」がかかってしまうことになる。

風力や太陽光に比べて安定的な発電が可能

 一方で、水力発電は、風力や太陽光に比べて格段に安定的な発電が可能である。それ故、上記のような「調整コスト」が不要な、「ベース電源」として活用できるのである。  つまり、同じ再生可能エネルギーを増やすにしても、水力を中心に していけば、上記のような「調整コスト」が不要となることから、エネルギーにかけるトータルのコストが縮減できるのである。  こうした背景から、わが国はさまざまな場所で精力的に水力発電開発を進めてきたのである。 結果、主要な水系の水力発電開発はおおむね完了していると言われることもしばしばだ。  しかしそれでもなお、イノベーティブな新しいアイディアを導入すれば、まだまだ開発できる余地が膨大に残されている。  例えば、元建設省河川局長の竹村公太郎氏は、日本の水力発電は、金額にして2兆円から3兆円分も増加させることができると指摘している。  これは、現状の電力市 場全体の規模の1割以上に相当する。現状の水力発電のシェアがおおよそ1割であることから、日本の水力発電の潜在能力をすべて発揮できれば、「2割」程度のシェアを占める状況を作ることができる、と指摘されているという次第である。  つまり、「水力発電イノベーション」は、エネルギー自給率を上げ、安全保障を強化すると同時に、国富の流出を防ぐことで日本の経済成長をもたらし、それらを通して日本を救う巨大なポテンシャルを持っているのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス
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