物価高によって家計支出が増加する一方、所得は伸び悩み、国民は苦しんでいる。だが、果たして原因はそれだけなのか?暮らしのそこかしこに潜む「生活苦の正体」に迫った。
「エンゲル係数」は42年ぶりの高水準に
600万円の貯金しかない通帳を手に、思い悩む岩田さん。50代世帯の平均貯蓄額約1700万円にはほど遠い……
家計が苦しい――。3年にわたり続く食品の値上げラッシュが直撃し、家計の消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」は2人以上世帯で28.0%と、42年ぶりの高水準。その高騰ぶりから「令和の米騒動」といわれたコメは前年同月比で44.7%も値上がりし(9月の消費者物価指数)、収入が伸び悩む多くの世帯を苦しめている。
「スーパーの特売でまとめ買いしたり、家計をやりくりしても全然追いつかない」
そうため息をつくのは、パート主婦の岩田百合子さん(仮名・53歳)。会社員の夫(56歳)、大学2年の息子、高校2年の娘の4人家族だ。彼女に現在と10年前の家計簿を見せてもらい(下図)、生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏にアドバイスを仰いだ。
10年前に比べて固定費が6万円もアップ
まず、毎月出ていく固定費を見てみよう。岩田さん世帯では、住居費と水道・光熱費、通信費の総額が、10年前に比べて6万円も増えている。近年、電気代が高騰しているが、「昼間は家族全員が家にいないことが多い。それに安い新電力を使っている」(岩田さん)ので、4人家族にしてはコストを抑えているように見える。だが、落とし穴もあると柏木氏は指摘する。
「昼間に電気を使わないなら、『夜割』の契約に切り換えれば電気料金を圧縮できます。低料金のイメージが強い新電力ですが、料金の変動幅が大きく、思わぬ出費に繫がることも。曇天で太陽光の発電量が低下する冬は要注意です」
実際、新電力最大手の東京ガスは、’25年3月検針分から電気代の0.8%引き上げを決めている。
支払いが増えている例はほかにも…
口座引き落としで、知らず知らずのうちに支払いが増えている例はほかにもある。
「子供がスマホを持つようになり、通信費が増えた」と岩田さんは嘆くが、「この世代は20ギガほどの通信量を使うのが普通なので、フリーWi-Fiを積極的に使うのを前提に契約を見直しましょう。大量の動画を視聴する世代だけに、忘れてはならないのはサブスクです」
知らないうちに家計を圧迫するサブスク
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):
@yel_ranunculus、note:
@happymother