Android4.0搭載で5000円! 中国のアキバ 「タブレットPC」投げ売り状態
「iPad」の商標権が「唯冠科技」に帰属するという当局の見解が発表された中国。これからは、山寨機(パチモン)だったとしても、iPadの名を付けて販売しても、アップル社には文句を言われる筋合いがなくなったことになるのだ。ということは、ニセiPadが氾濫する結果になりはしないだろうか。そこで、山寨が溢れる中国有数の電気街、深セン圳市の華強北路を訪ねてみたのだが、判明したのは意外な事実だった。
ドラゴンガジェット編集部は同電気街の中心にある、携帯電話やPCの販売業者が1坪ほどの店舗を連ねるビルへとやって来た。ここではかつて、iPhone4Sのパチモンを発見したことがあったからだ。そこで早速、3月にアップルから発売されたばかりの新iPadの山寨機はないか、複数の店舗を尋ねて回った。早速、「498元でいいよ」と見せられたのが、最新のOS、Android4.0搭載で16GBメモリ内蔵の10インチ型タブレット。サイズ感と外見こそ似ているが、「iPad」のロゴはなく、発売されたのも新型iPadの発表前ということだった。
さらに別の店舗を当たろうと、その場を立ち去ろうとしたところ、後ろから「400元でどうだ!」と声がかかる。日本円にして約5000円ほどと、スペックからしても十分安いが、腰を据えて交渉すればさらに安くなりそうな雰囲気だった。
筆者はiPadとほぼ同じ10インチ型のものを中心に、複数の製品に触れてみたが、タッチパネルの動作は滑らかで、液晶も鮮明。ネットサーフィン用なら何の問題もなく使えそうだった。なかにはiPadに負けず劣らずの薄さの商品もあった。しかし、やはりいずれも新型iPad発表の前に発売されたものばかりで、iPad2の山寨機として作られたもののようだった。
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そこで「『新型iPad』の山寨は出ていないのか?」とある店舗のスタッフに尋ねてみたところ、返ってきたのは意外な答えだった。
「見かけが似せても売れないからな。お金を出せば本物も手に入るわけだし」
パチモン大国で山寨が売れないとは一体どういうことなのか。
実は、中国の山寨タブレットPC市場は、今や過当競争に陥っているのだ。ネットメディアの『中国経営報』も、熾烈な価格競争のなか、山寨タブレットPCは200元台の製品がメインとなりつつあり、一時は20%を誇った山寨タブレットPCメーカーの利益率は今や5%にまで低下したと伝えているというのだ。同紙は、価格暴落もさることながら、部品の原価が市場で知られてしまい、発展途上国から来るバイヤーたちの値切り交渉で疲弊してしまっているというのだ。そんななか、 2010年には深圳市内に1000社ほど存在した山寨タブレットPC関連企業も相次ぐ撤退や倒産で、今や半分ほどになっているという。
数ある山寨市場のひとつが終わりに近づいた今、パクリ産業はオリジナル機器の開発に舵を切るのか、はたまた新たなパクリ対象の登場を待つのみなのか、世界中の注目が集まっている。
【取材・文・写真/ドラゴンガジェット編集部】
ガジェット好きのライターや編集者、中国在住のジャーナリストが中心メンバーとなり、2012年1月から活動を開始。東京と深セン、広州を拠点に、最新の話題をお届けする。
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