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エルピーダに次ぐXデーが噂されるルネサス 支払い条件を大幅変更の怪

お支払い条件の見直し,ルネサス

ルネサスが特定の取引に流したそられる「お支払い条件の見直し」の紙

 2月に半導体メモリ大手のエルピーダメモリが会社更生法を申請して以降、「次のエルピーダ」探しが止まらない。そのうちの1社として浮上しているのが、同じ半導体メーカー大手のルネサスエレクトロニクスの名前だ。日立製作所、三菱電機の半導体部門を統合して誕生したルネサステクノロジーが、一昨年にNECエレクトロニクスと合併して誕生したこの会社、東日本大震災で那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災したこともあって、’10年度の誕生以来2期連続で赤字を垂れ流している……。  加えて、突然、支払い条件を変更したことが話題になっている。 「取引先に対して、『お支払い条件見直しのお願い』という案内を出したのですが、その内容が驚くものでした。いきなり、支払いを9か月後に延ばしてほしい、という内容だったのです」  そういって、業界関係者が見せてくれたのが、この紙(画像参照 https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=215069)。  この「お支払い条件見直しのお願い」によれば、経費購入に関しては「計上後2か月後末日支払い」を「6か月後末日支払い」に、固定資産投資に関しては「2か月後末日に67%支払い、3か月後末日33%支払い」を、一括して「9か月後末日支払い」に変更してほしいとある。 「経費購入」とは、ルネサスが半導体を製造する際に必要となる原材料の調達に際して発生するお金であり、「固定資産投資」とは半導体製造装置などの設備投資にかかるお金を指す。  要は、支払いスパンを今の3倍に延ばしてください、ということ。経済誌記者が話す。 「資金繰りが厳しいのは間違いない。本体も、子会社であるルネサスエレクトロニクス販売にも、三菱電機クレジットをはじめとした信販会社が債権譲渡登記、つまり売掛債権を担保に融資しているのですが、子会社のほうには新たに日立キャピタルが債権譲渡登記をつけたと言われています。もともと出資元である日立製作所のグループ企業として支援しますよ、ということなのかもしれませんが、信用不安の拡大を受けて担保をとった可能性もあります。どちらにしてもキャッシュが不足していることには変わりません」  だが、ルネサス広報担当者は、暗に「資金繰りの悪化」を否定する。 「支払い条件見直しのお願いを出したのは、3月頃。ちょうど、エルピーダさんが会社更生を申請した直後でした。そのタイミングで、お取引先の方は弊社の案内を目にしてしまったため、『次はルネサス?』と驚かれたようです。しばらく、信用調査会社からの問い合わせが相次ぎました……」  条件の見直しを行った背景には、旧NECエレクトロニクスとのシステム統合があるという。広報担当者が続ける。 「旧NECエレと旧ルネサス、両方とお取引されていた会社と新ルネサスとの間には、さまざまな条件の契約が混在していました。それを、システム統合を期に『1社1条件』に変更するために案内を出させてもらったのです。つまり、あらゆる取引の支払いを9か月後に先延ばしにするという意味ではなく、旧NECエレとは9か月後支払い契約、旧ルネサスとは6か月後支払い、という契約を結んでいたお取引先に、『4月以降は9か月後支払いに一本化させてください』という形で案内を送らせてもらったわけです」  要は、旧NECエレ、旧ルネサス、どちらとも「6か月後支払い」の契約を結んでいた会社に対しては「支払い条件見直し」はナシ。あくまで、過去に「9か月後支払い」の契約を結んでいた会社との契約を、「9か月後支払い」に一本化しただけというのだ。 だが、業界関係者は次のようにいぶかる。 「9か月後の支払いなど、ほとんど聞いたことがない……。せいぜい長くて6か月後支払いでしょう。それを、9か月後に一本化して取引先が納得してくれるなんて、うらやましすぎます。まあ、どんなに業績が落ち込んでも、ルネサス本体と販売子会社合わせて1兆円の売り上げがありますから、取引先もむげに断れないでしょう」 エルピーダ亡き今、国内半導体産業を支えるルネサスにXデーが訪れないことを祈ります! <取材・文/池垣完>
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