コメの高騰で苦悩する回転寿司チェーン。最高益が相次ぐ好調4社と明暗分かれた“かつての王者”
1兆円市場(海外出店分も含む)に迫る回転寿司。日本の外食にはなくては困る存在となっており、家族のコミュニケーションには最適な場ともなっている。令和の米騒動で外食チェーンは米の量的確保や価格高騰対策に追われて、厳しい経営を余儀なくされており大変な状況だ。
業界1位のスシロー(店舗数646店、2024年9月時点)の2024年9月期決算は、売上が前期比19.7%増の3611億円だ。営業利益は前期比112.6%増の234億円と2倍強で、営業利益率は前期の3.6%に対して今期6.5%と収益力は、著しい伸長度を見せている。純利益は前期比81.9%増の146億円で過去最高益を更新した。
割安感を訴求したキャンペーンを継続的に実施し、集客力を高めたようである。週初めにLINE登録会員に新メニューを配信するなどの販売促進活動が常連客の来店動機に繋がっているようだ。60歳以上のシニアには5%割引のカードを配布している。子や孫などを連れてくるシニアが増加し、1組あたりの売上が増加しているようだ。
海外事業ではタイなどアジア各国で、新規出店を拡大し好調で、中国では行列ができる店と話題になっている。国内外の実績を見てみると、前期比で国内売上は15.7%増、営業利益は93.2%増でほぼ倍増と好調だ。海外も前期比で売上は39.3%増、営業利益で36.6%増と順調のようだ。
商品力の優劣を評価する原価率は、前期44.5%から43.1%に抑制されている。原価率の高さが業界1位でそれだけ商品に力を入れていると思われていたものの、利益率が低い原因だったのは事実。それが、今期は商品ミックス計画の最適化と商品ロスの低減で原価を抑制できたようだ。相変わらず、「商品力のスシロー」は健在のようだ。
外食最大手ですき家などを運営するゼンショーが、回転寿司事業への参入を目的として、2002年10月に設立したのが業界2位のはま寿司(国内620店、海外82店、2024年9月時点)だ。
立地は郊外ロードサイド店が多く、いつも新ネタを紹介した賑やかな店頭にタペストリーを設置し、道路側には目立つノボリを立て、吸引力を強化している。はま寿司もライン登録会員への頻繁な新メニューの紹介とクーポン付与を毎週必ず実施しており、販促活動も強化しており、最も店舗数を増やして勢いがあるようだ。
売上は前年1695億円(2023年3月期)に対して1971億円(2024年3月期)と、前年同期比16.3%と伸ばしており、営業利益に関しても前年84億円(2023年3月期)に対して114億円(2024年3月期)と35.5%も伸ばしている。売上の伸びより利益の伸びのほうが大きいのは、DXの積極的な推進が、効率性をさらに高めているのが推察される。
直近の業績(2024年4~9月、2024年上期)を見ると、前年同期比938億円に対して今期は1171億円と24.8%増だ。営業利益は前年同期比49億円に対して今期は97億円と約2倍に急伸しており、最も成長路線に乗っているように見える。
たださえネタである魚介類系の原価が高いのに、必須の米まで値上がりして、利益を確保するのに必死な回転寿司チェーンは費用構造の見直しなどに追われている。日本人の主食である米は、昨年の猛暑による影響で、高品質米の供給不足もあるが、訪日外国人客による日本食の爆食いが原因で、米の需給が逼迫していることもある。
その結果、8、9月はスーパーですら入荷できず各家庭に米が回らないなど非常事態になっていた。激変する市場環境の中、大手回転寿司チェーン上位5社(スシロー・はま寿司・くら寿司・魚べい・かっぱ寿司)の現状と今後の行方を観察してみたい。なお、ランキングは国内外の店舗数合計による。
圧倒的な勢いで他を突き放す“王者”「スシロー」
最も積極的に出店数を増やしている「はま寿司」
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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