ゆとり教育だけが要因ではない…「平成生まれの退職理由」から見る若者の職業意識
4月になり、新社会人が新たなスタートを切った。そして就職活動の解禁も3月へと変更されたことで、慣れないスーツに身を包む男女が街に溢れている。
最近は、若手社会人による入社後すぐの退職が問題視され、その原因のひとつとして「採用のミスマッチ」が挙げられている。そして今月14日、就職・転職のための企業リサーチサイト「Vorkers」は「平成生まれの退職理由ランキング」を発表した。結果は以下の通りだ。
<平成生まれの退職理由ランキング>
1位 キャリア成長が望めない 25.5%
2位 残業・拘束時間の長さ 24.4%
3位 仕事内容とのミスマッチ 19.8%
4位 待遇・福利厚生の悪さ 18.5%
5位 企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ 14.0%
⇒【資料】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=836187
平成生まれの退職者のうち4人に1人が「キャリア成長が望めない」もしくは「残業・拘束時間の長さ」を理由としていることがわかる。
しかし、こういった理由は「平成生まれ」に限定されたことなのだろうか。同じく「Vorkers」に寄せられた、全世代が対象の退職理由に関するクチコミ4万370件のキーワードを分類したところ、以下の6つの傾向が挙げられた。
<社員クチコミから見る6大退職要因(出現率)>
1位 キャリア(仕事、キャリア、環境、成長など)38.38%
2位 待遇(給与、給料、評価、待遇など)16.18%
3位 ワークライフバランス(残業、家庭、結婚、生活など)15.18%
4位 人間関係・社風(上司、人間関係、雰囲気、社風など)10.68%
5位 ハードワーク(体調、体力、ノルマ、仕事量など)7.14%
6位 会社都合(リストラ、業績悪化、希望退職など)1.15%
※出現率は小数点第3位以下を四捨五入したもの
(クチコミ回答数=40,370)
全世代を対象にした退職理由と比較すると、世代を問わず「キャリアアップ」を理由に退職する人が最多であることがわかる。一方で、残業など「ワークライフバランス」を理由に退職する人が全世代では15.18%であるのに対し、平成生まれの若手社会人では24.4%と、およそ10%近いギャップがあるのだ。
平成生まれの言い分はこうだ。「残業が慢性化しており、定時で上がれることはまずありませんでした(アパレル、女性)」、「拘束時間が長い、自分にやることがなくても、お客さんのデータ待ちで帰れない(代理店、女性)」、「残業代がでない。仕事の拘束時間が長く、転勤も多い(小売、男性)」
平成生まれと言えば、学生の頃から「ブラック企業」「ワークライフバランス」などといった言葉がさかんに叫ばれていた世代と一致する。
「ブラック企業」の存在が広く世間に知られるようになったのは2008年のことだ。インターネット掲示板「2ちゃんねる」発で書籍、コミック、映画化された『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』(新潮社)が話題を呼び、以降、2013年には流行語大賞トップテンに選ばれ社会現象となった。
さらに「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」が策定されたのも、2007年のことである。「ノマド」の流行もこれらの時期と重なるだろう。
雇用の流動化、ブラック企業、ゆとり教育……職業意識の変化にはさまざまな要因が絡み合っているだろうが、若者の労働時間とプライベートの充実に対する意識が高くなったのは間違いなさそうだ。 <取材・文/北村篤裕>
●Vorkers
就職・転職の参考情報として「在籍企業の職場環境」に対する「社員・元社員」の評価点やレポートを共有。企業の「社員・元社員」から情報を収集しているWEBサイトとしては、国内最大規模のレビュー数(73万件超)が蓄積されており、会員数は約80万人(2015年3月時点)。
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』 21世紀の「蟹工船」 |
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