非合法の闇市と化す「ダークウェブの謎」―― Google検索では見つけられない裏の世界
なにごとも普通には見られない“裏”の世界が存在する。インターネットも例外ではなく、銃やドラッグが取引されるダークウェブと呼ばれる世界が広がっていた。
◆買えないものは何もない? ネットの闇にアクセスする
普段なにげなく使っているインターネットには、Googleで検索しても見られない、裏の世界「ディープウェブ」が広がっている。
だが、Torを使った犯罪は、昨今それほど“安全”ではなくなってきている。なぜなら、FBI(米国連邦捜査局)やユーロポール(欧州刑事警察機構)といった法執行機関が共同で、’13年にダークウェブの一斉取り締まりを行った。この際、代表的な闇市場サイト「シルクロード」の管理者など17人を逮捕。既に、Torの安全神話は崩れているのだ。
警察などの法執行機関も手をこまねいているわけではない。覗くだけならいいが、自らが犯罪に手を染めてはいけない。
<闇市で出回っている危ない商品>
◆銃やドラッグ、偽札からヒットマンまで出品!暗黒すぎる巨大市場
ダークウェブをTorブラウザで少し調べただけでも、銃やドラッグ、偽造のドルやパスポートを販売するショッピングサイトを見つけられた。実際に取引をしたわけではないので、購入した場合に商品がきちんと届くのかは不明。匿名性の高さが特徴のTorブラウザだが、昨今ではFBIなどに、ハックされているとも言われる。安易にTorを使おうとしないことが賢明だ。
【本堂マサヤ氏】
「激裏情報」を主宰。’96年から同サイトにて、世の中の裏側を詳細に伝えている。 http://gekiura.com
取材・文/河原塚 英信 図版/MMPグラフィックス
「研究者によると、一般の人が目に触れるサイトのウェブ全体に占める割合は、1%にも満たない。そんな見解を示しています」
説明してくれたのは、インターネットに精通する「激裏情報」主宰の本堂マサヤ氏。つまり、残りの99%は、ディープウェブの世界。その広大な仮想空間の中には特定のツールやサービスを使ってしかアクセスできない領域があり、「ダークウェブ」と呼ばれる。そこはまさに無法地帯。あろうことか、銃やドラッグが日常的に取引されているのだ。
「もともとは米海軍の研究試験所が、諜報活動や情報源とのやりとりを秘匿する目的で開発したものです」(本堂氏)
ダークウェブにアクセスできる代表的なツールが、Tor(トーア)と呼ばれるブラウザだ。一般的に、パソコンなどの端末からインターネットに接続すると、ユーザーの足跡が残る。だが、その足跡を消せるのがTor。’12年に起こったパソコン遠隔操作事件でも、犯人はTorを利用。警察はなかなか犯人を特定できなかった。
このTorだが、実は誰でも簡単にダウンロードできる。筆者も試してみたが、一般的なソフトと同様に、驚くほどあっさりとインストールできてしまった。
◆銃や麻薬などの取引から殺しの依頼までできる!
Tor自体は一般的なブラウザと同じ。ただ、違いは2つある。1つは、自分のパソコンを特定するIPアドレスを、秘匿できること。もう1つが、犯罪の臭いがプンプンするサイトにアクセスできることだ。
詳細は省くが、あるキーワードを検索すると、犯罪サイトのリストや、まとめサイトが見つかった。そこでは「Financial Services(金融サービス)」や「Commercial Services(商取引)」、「Drugs(薬)」といったカテゴリーが乱立。ドラッグ販売サイトはもちろん、仮想通貨であるビットコインを2倍にしてくれるというサービスや、ヒットマンを雇えると謳うサイトまで存在するから驚きだ。
Torのインストールから、犯罪サイトへアクセスするまでには、1時間も掛からなかった。もちろん、各サイトで取引するまでには、さらにハードルがあるのだろうが……。想像以上に容易に、こうしたサイトにアクセスできるとは、正直思わなかった。
前述の本堂氏によれば、ダークウェブは「追跡不可能なグローバル・ネットワークと定義する人もいる」と言われている。もし本当なら、誰もが簡単に犯罪を起こせることになってしまう。
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