日本の文化 本当は何がすごいのか【第8回:日本の家屋】

日本の家屋①茶室

木造の日本家屋(会津若松城茶室麟閣)


木造の日本家屋

 
 人が住む家というのは日常生活に密着している、というよりも日常そのものですから、そこに住み、暮らしている人にとってはすべてが当たり前すぎて、自分が住んでいる家屋が備えている意味や表出しているものを感じることはありません。しかし、家屋は日常そのものであるからこそ、その家屋をつくり出し、そこで生活を営む人、民族の精神性や文化性を凝縮して表現している、といえます。そういう視点で日本の家屋を見ていきましょう。

 まず、日本の家屋は木造である、ということです。最近は団地やマンション、それに軽量鉄骨構造やパネル構造の家屋が増えてきていますが、それでもやはり、いまでも日本の家屋の基本は木造です。

 いまでは壁を立てて間仕切りする家屋が増えていますが、以前はそうではありませんでした。壁は少なく、間仕切りするのは紙でできた襖や障子です。その襖や障子を開け放つと奥まで見通せるような具合で、大変開放的な構造になっています。こんなふうですから壊れやすい。火をつければ、たちまち燃えてしまいます。

石造りの欧米の家屋


 一方、欧米の家屋の基本は石造りです。堅牢です。容易なことでは壊れません。石を積み上げる構造ですから、当然外部とは遮断され、密閉性の高いものになっています。

 中国の家屋も木造のものもありますが、厚く土を塗り込めた壁を立てて堅牢性を確保しています。地域によっては煉瓦造りが基本というところもあります。密閉性は高く、日本の家屋のように開けっ広げではありません。

 壊れやすい日本家屋と堅牢な欧米の家屋。この二つを並べてどう感じるでしょうか。

 明治初期に日本にやってきた欧米人には、日本の木造家屋が珍しいものにも、奇異なものにも映ったようです。一種の驚きをもって日本家屋の印象を書いたものがいくつか残っています。壊れやすい家は堅牢を旨とする家屋に住んでいる欧米人には、仮の住まいとしか見えなかったようです。 しかし、日本人は仮の住まいのような家で長く暮らしています。その理由はおしなべて質素さに求められています。また、他人が入ってくるのも容易に許してしまうような開けっ広げな構造は、欧米人にはただただ不可思議なものだったようです。

人間同士の信頼関係が生んだ日本の家屋

 
 日本の家屋を見て質素さを感じ、開放性の高い構造を不思議がる。これはその人の感受性の問題でしょう。そうなのです。壊れやすく開けっ広げな日本の家屋は、人間同士の信頼関係がなくては成り立たない、と感じ取る見方もあるのです。

 昔から日本全土は、諸外国に比べるとほぼ均一といってもいい文化に彩られ、コミュニケーションも容易です。そして、文化の単一性を土台に古くから培ってきた和の心があります。この信頼関係が柔らかで開放的な家屋を生み出したことを知らなければなりません。

 もちろん、長い歴史の中では戦火に見舞われ焼け落ちる、暴力で破壊されるということも度々起こりました。しかし、戦という一時期の特殊な状況の下で起こったことです。日常的にあるものではありません。日常にあるのは和の心に満ちた信頼関係だった、ということです。そして、信頼を 前提にして日常生活を営める環境は、世界を見回してもあまりないことを知っておく必要があります。

 欧米は異民族、異なる文化をもった人間が接触する機会が多い環境です。異なる文化を理解するのは難しいことで、なかなか気心が知れません。警戒心を切らすことができません。実際、警戒を怠れば思いがけないことが日常的に起こります。そういう環境が容易に破壊できない堅牢性を備え、外部を遮断した密閉性の高い石造家屋を成立させたのです。

 柔らかで開けっ広げな日本の家屋は、特殊な日本文化の賜物なのです。

(出典/田中英道著『日本の文化 本当は何がすごいのか』育鵬社)

【田中英道(たなか・ひでみち)】
東北大学名誉教授。日本国史学会代表。
著書に『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』(いずれも育鵬社)ほか多数。

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