『艦これ』人気キャラ・駆逐艦「雷」に隠された感動エピソード
12月8日は太平洋戦争の開戦日で今年で74年となるが、「昭和は遠くなりにけり」。真珠湾攻撃の日でもあるが、大日本帝国海軍といえば、艦艇を美少女キャラクターに擬人化したオンライン海戦ゲーム『艦隊これくしょん』(通称「艦これ」)のほうが認知度が高く、来年には映画も公開予定だ。
『艦これ』にはあの戦艦「大和」や空母「赤城」も登場するが、その中で元気活発で母性あふれる少女キャラとしてプレイヤーに人気なのが駆逐艦「雷」(いかずち)である。
実はこの「雷」のキャラ設定には、実在の駆逐艦「雷」の太平洋戦争での秘話が投影されていることをご存知だろうか?
マンガ海の武士道』(育鵬社)も出版されているので、詳しく知りたい方はぜひ参考にして欲しい。
『艦これ』の「雷」も、自己紹介でこの事件について語っている。ちなみに、アイテム発見等の時の彼女のセリフ「助けるわ!」は、このエピソードから生まれたセリフであることは言うまでもない。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
1942年2月末、現在のインドネシアのジャワ海で、資源地帯の確保を図る日本海軍とこれを阻みたい連合国軍の間でスラバヤ沖海戦が起こった。海戦は日本軍が圧勝。大敗した連合国軍艦隊は多くの軍艦が撃沈、脱出した数多くのイギリス海軍将兵たちが海に漂流することになった。
真っ暗闇の海上を漂流しながら彼らは味方の救助を待った。朝日が昇り、20時間が経過した――。しかし、味方の軍艦は現れない。絶望したイギリス兵の中には自殺を図る者まで現れる始末だった。
そのとき、彼らの目の前に1隻の軍艦が現れる。それは敵である日本海軍の駆逐艦「雷」であった。
イギリス兵たちは、自分たちは日本軍に皆殺しにされる、と覚悟した。当時は戦争中であり、そうなっても当然だった。しかし「雷」艦長の工藤俊作少佐は驚くべき命令を発した。
「敵兵を救助せよ!」
長時間の漂流で衰弱していたイギリス兵たち422名は全員救助された。その数は「雷」乗員の2倍近くにのぼった。日本兵は彼らの身体を真水で洗ってやり、貴重な飲み水と食料も惜しみなく分け与えたという。
この秘話は、日本では戦後ほとんど知られることがなかったが、救助されたイギリス海軍士官の一人、フォール卿の証言が2003年に日本のラジオで紹介されたことをきっかけに、日本人にも知られるようになったのである。後年、工藤艦長の顕彰式典も開催され、イギリス政府からも駐日大使らが参列した。
「戦争であってもフェアに戦う。困っている人がいれば敵であっても全力で救う。それが日本の武士道――」
フォール卿は1996年に出版した自伝の中で、当時の日本海軍についてこのように述べている。さらに自伝巻頭では「故工藤俊作に捧げる」と記すほどに工藤艦長を敬愛していた。
この戦場秘話は、フジテレビの「奇跡体験! アンビリバボー」でも紹介され、『
『マンガ 海の武士道』 「敵兵を救助せよ!」422人の命を救った日本海軍駆逐艦「雷」艦長・工藤俊作の決断とは? |
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