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奨学金は足かせに!? “借金まみれ”の恐怖で研究者を断念する若者たち

 政府は「ニッポン1億総活躍プラン」で、返済不要の給付型奨学金について「創設に向け検討を進める」と明記した。事実、安倍晋三首相は「給付型奨学金の予算を来年度にも盛り込む」と参議院選の翌日に発言している。奨学金返済の恐怖は、研究者にとってどのような心理をもたらすのか? 「奨学金を借りて大学院に行った途端、専任になるための文章を書かなきゃという意識が芽生えるわけです。大学院の修士、博士と進んだが、大きな借金ができてしまった。ではどうすればいいかと言うと、いい成績、成果を上げなければなりません。査読付き研究論文を年に3本以上とか、アカデミックな研究論文の本数を増やして業績を上げなくてはいけない。本来ならば、大学院も好きな勉強をゆっくりできるモラトリアム期間だったはずなのに、それよりもいかに仕事をとるための文章を大量生産するかを考えさせられる。カネと業績のために、自分が学んできた力のすべてが収斂され、仕事のための研究になってしまう」(栗原氏)  無計画に借りる学生側に非がないとはいえないが、本来は学生を支える存在だった奨学金がいまや逆に足かせに。さらに研究者に問われているのは、就活にも求められるコミュニケーション能力だ。 「先生との人間関係で、専任講師の仕事を振ってもらえたり、博士論文を通してもらえたりするわけで、そこで問われているのは、就活で言うコミュニケーション能力です。もしこれがいやでも、奨学金を背負っているほど、先生に逆らえなくなる。本来は一番自由度が高くていいはずの、いろんな意見が言えなくちゃいけないはずの研究者が去勢されてしまっているんです」(栗原氏)  今や奨学金は学業や研究を後押しするばかりか、若者にとっては“借金まみれ”の恐怖として重くのしかかっている。 <取材・文/神田桂一 北村篤裕(本誌)>
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