警備会社・BONDS SECURITYが語るアイドルフェス警備の舞台裏「アイドルオタクとも絆を強めていきたい」
BONDSの業務内容は多岐に渡る。VIPやタレントなど民間の身辺警護、格闘技大会やイベントフェス等の施設警備、某人気アパレルブランドの商品発売時に対し整列客のエスコートなど……。ここ数年で始まった海岸警備に関しては、当初は組合や海の家からの依頼を受けていたものの、4年目以降から警備が拡大。現在はイベントのみならず、夏の期間中は某海岸全域による治安維持の警備に日々励み、仕事も行政から請け負っているという。
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普通の警備会社と違い、リスクある警備を請負うことが多いBONDS。そんな海千山千の男たちをもってして「ある意味、今回のアイドルイベントは過去行った警備の中でも特殊だったかもしれない」と言わしめる。一体、現場で何があったのか?
「禁止行為を行う者に対し注意をしに行く中で“殺すぞ!”ってすごまれたり、頭突きを喰らったり、いきなり背後から蹴られたり……もう散々でしたよ。うちの隊員の中には、今回の警備中、軽い負傷者も出ました(笑)。本来だったら、手を出してきた時点で現行犯逮捕なんですけどね。現場は混乱の極みで、収拾がつかない感じだった」(BONDS警備責任者・N氏)
ブブゼラが一斉に吹かれ、巨大フラッグが振られ、浮き輪が空を舞う。禁止行為のモッシュやダイブも至るところで行われているが、あまりの人数に取り締まることもままならない。厄介ピンチケの中からは「数の力と勢いでBONDSを圧倒してやった!」と勝利宣言する者まで現れる始末。こうなると「厄介ピンチケ対BONDS」の抗争が激化するかと思われたのだが……。
「むしろ逆です。初日の結果を踏まえ、我々も反省したんですよ。お客さんと揉み合いみたいになっていたので、こちらも感情的になってしまった部分があるのかもしれない。なので次からは頭を冷やし、再び対話路線に立ち返ろうとした。“目には目を”となったら終わりですから。やっぱりトラブルにはあくまでも冷静に対処すべきなんです」(前出・N氏)
だがBONDS側のこうした想いも虚しく、次のステージも同じように荒れた現場となった。ここで主催者側は躊躇なく音源をストップ。ステージは中途半端な状態なまま終わった。演者にとっては一番可哀想なケースだし、もちろんファンだってこんな事態は望んでいないはず。だが、それも仕方なかったという。
「実際、リフトされていた人が顔から落ちて負傷しているんですね。後ろから押されてケガしたケースもありましたし。サイリウムだって今のやつはサイズが大きいから、投げられて後頭部に当たったら危ないですよ。リアルに危ないという認識を持っていただきたいです。ただし禁止行為を働いたとしても、一発退場というのは基本的にしたくない。再三に渡って注意を聞いてくれない場合は退場してもらいますけどね。というのは、別に退場させるのが目的じゃないですから。イベントを楽しんでもらいたいだけなんですよ。だから対話の姿勢は崩したくない」(前出・O氏)
こうしたBONDSの姿勢について、一部ファンからは手ぬるいという声も挙がっていた。「厄介ピンチケなんて話が通じる奴らじゃない。BONDSさん、痛い目に遭わせちゃってくださいよ」というわけだ。だが、N氏は「全員がそうとは言わないが、話せばわかってくれることがほとんど」と断言する。そもそもBONDSとは「絆」という意味。これは仲間うちの絆はもちろんのこと、顧客(主催者側)との絆、観客との絆も大事にしようという理念から名づけられたという。
「親と子みたいな関係です。辛抱強く対話を続けるしかない。どこでもそうなんですが“俺らは客だぞ。お客様は神様のはずだろ!”っていう考え方が根底にありますしね。もっとも他のお客さんに迷惑をかけている以上、そんな理論は成り立たないのですが」(前出・N氏)
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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