更新日:2018年03月05日 13:18
仕事

輸入車ディーラーのセールストークに見る 「営業テクとナンパテクは一緒」理論

3:先に心配事項を話してしまう「終電理論」

 営業マンは、山本氏の質問に答えた後、再び攻勢に転じた。「Xは決して安くはないんですが、モデルチェンジは頻繁でないし、下取り価格が高いんです。数年乗ってから売ると、結局実質的に使ったお金は150万くらいでおさまりますから」と、買う側にとって最も心配している点、価格の話を先に切り出したのだ。 「こちらが気にしている話を、向こうからそれとなく切り出す。これは、ナンパトークにおける“終電理論”と同じ。女のコが気にしがちな終電の時間を、ごまかすのではなく、あえてこちらが大げさに気にしてあげるテクニック。まだ早い時間の21時頃から『まだ終電大丈夫?』と冗談めかして気にしてあげることで、信頼感を得られるんです。相手の懸念事項をごまかすのではなく、むしろこちら側から話してしまう。結果、『終電を気にしてくれるあなたとなら終電を逃してもいいかも』という逆説が生まれる(笑)」  車の価格の話になり、山本氏が「僕は歩合制の営業職なので、収入が安定しなくローンが通るか心配だ」と話すと、営業マンはXの購入者の多くが収入に幅のある生保や不動産の営業マンや自営業者であることを説明し、「X好きの方はちょっと変わった個性的な方が多いですよね」という言葉をかけてきた。 「これはバラエティ番組で、お笑い芸人とアイドルの関係でよく見る“褒めイジリ”です。少し変わった個性をアピールするアイドルを、お笑い芸人がいじって、アイドルが喜ぶという光景を見たことありますよね?たしかに、私も『普通とは少し違う、個性的なキャラ』を自認していますし、ファッションにもこだわっている。そこを観察して、“個性的”と言ってきた。一歩間違えばイジりですが、ここまでコミュニケーションを築けた段階なら効果的に作用します」(山本氏)  ディーラーは、各メーカーの客層をしっかり分析し、会話のルーティーンを構築していた。これは、ナンパにおいてターゲットとなる女性を分類して会話のルーティーンを構築しているのとまったく同じ構造だった、と山本氏は振り返る。 「あえて営業マンとナンパ師の違いを挙げるとすれば、営業マンにはボディタッチがないことくらいじゃないでしょうか(笑)」(山本氏) <取材・文/日刊SPA!取材班>
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