技術だけでは足りない「自動運転車」を市販するために必要なこと
――この先の自動運転社会の見通しはどうなのか?
日本政府は自動運転に対する当面の理想を『事故のない交通社会をサポートする技術』と定義づけています。例えば、運転操作のミスは90%以上が人為的と言われていますが、自動運転技術を搭載したクルマが普及することで、ドライバーのミスによる事故の減少が期待できます。今すぐ完全な自動運転社会の実現が難しいなかで、できることから実用化して交通事故対策をしています。
――具体的な事例として何があるのか?
その一例が、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と呼ばれる技術で、センサーが認識した前走車の情報に合わせて、アクセルやブレーキ操作が一定の範囲内で自動的に制御されます。もちろんシステムが作動中でも、ドライバーがアクセルを踏み足したりブレーキを踏んだりするなどの操作で補う必要はありますが。
――自動運転社会の実現に向けて大事なことは何か?
前述の法律やインフラの整備も大事ですが、もっとも大事なことは自動運転社会に向けてドライバーである人も機械であるクルマと協力した協調運転に慣れる必要があると思います。もちろん、ドライバー側だけの一方的な歩み寄りだけではありません。クルマがドライバーを理解するという研究も進められています。例えばオムロンが研究している「ドライバー運転集中度センシング技術」では、クルマがドライバーのモニタリングをすることで、機械が人を理解することを試みています。どこまでわかるかは未知数ですが、人間同士がわかる範囲の感情は認識することが可能なレベルになっています。将来的にはAIが人の状態や感情を理解し、「人を理解するクルマ」が登場するかもしれません。
『2020年、人工知能は車を運転するのか』
<取材・文/担当K>
自動運転車と聞いて誰もが思い浮かべる「ナイト2000」のような夢のクルマの登場を願って、まずは人も自動化していくクルマを理解することから始めなくてはいけないのだ。
【西村直人】
1972年東京都生まれ。自動車雑誌の編集部員からフリーに。自動車とバイク、両方OKのモータージャーナリストとして活躍中。日本自動車ジャーナリスト協会理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に1
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『2020年、人工知能は車を運転するのか ~自動運転の現在・過去・未来~』 手動運転→協調運転→自動運転への進化と、この進化を加速させる人工知能との連携について、政府の戦略、自動車メーカーやヘルスケアメーカーの取り組み、海外事例など、あらゆる角度から最新動向に迫る。 |
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