更新日:2022年12月17日 22:49
仕事

「昇進したら吐き気が…」うつ状態になる“4月病”が増えている

プログラマー

めでたい昇進だったはずが吐き気と頭痛が止まらない

 プログラマーとしてシステム開発会社に勤務する太田典弘さん(仮名・36歳)が原因不明の体調不良に襲われたのは、4月にマネジャー職に昇進した直後だった。 「もともと人とかかわるのが嫌だからプログラマーという職業を選んだのに、まさか人を束ねる立場になるとは思っていませんでした。まあでも、何事も経験だと思って人事を受け入れたのですが……」  昇進後1週間もすると、会社に行こうとしたときに吐き気や頭痛が止まらなくなり、這うようにして会社の前まで行くものの、どうしても会社のある12階まで上がれなくなってしまったという。 「病院に行ったらうつ状態と診断されました。しばらくは自宅作業で様子を見ようということになったのですが、ツイッターで同僚が『昇進早々病欠するヤツとかありえない』と自分の悪口を書いているのを見てしまった。貯金もあったし、正直プログラミングの技術があれば食っていける自信はあったので、有休を消化して、連休明けには会社を辞めることにしました。昇進さえなければ働きやすい職場だったんですけどね……」  現在は同業他社に転職して現場のプログラマーとして快適に働いているという。 「理不尽な異動や降格と違って、昇進となると、周囲からしてみればめでたい話。それが原因で体調を崩してしまうと、本人にとっては深刻でも理解を得づらいんですよね。でも、管理職への昇進をきっかけにうつ状態になる人は結構多いんです」(前出の松本氏)  前出の大室氏も指摘する。 「管理職としての教育を受けていなかったり、明らかに不向きな人が、専門職として出世していくというキャリアコースが多くの日本企業では確立されていないんです。また、現在の管理職の多くはいわゆるプレーイング・マネジャー。現場仕事にアイデンティティがある人はどうしても自分の裁量でプレーイングのほうに重点を置きがちですが、部下からしてみれば『細かいことにやたら口出ししてくる割に、肝心なことを仕切れないダメ上司』。現場のプライドを捨てきれないせいで部下の信頼を失い、孤独感を深めてしまうんです」  うつが重症化する前に、太田さんのように合わない仕事にはさっさと見切りをつけてしまうのが有効な対策なのかもしれない。〈取材・文/週刊SPA!編集部〉 【大室正志】 医療法人社団同友会産業医室勤務。産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医実務。メンタルヘルス対策ほか企業における健康リスク軽減に従事。約30社の産業医を担当 【松本利明】 大手外資系コンサルティングファームの部長級を経て人事・戦略コンサルタントに。最新刊に『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)が好評発売中など ※週刊SPA!4月3日発売号「その不調、4月病!」より
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週刊SPA!4/10・17号(4/3発売)

表紙の人/ 小林よしのり

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