スポーツ

急死した衣笠祥雄さんの名言がしみる「あなたらしい生き方をしなさいね」

③言葉を重んじる

 常に現役選手を優しく見つめてきた衣笠氏だが、『昭和プロ野球の裏側』(廣済堂新書、江夏豊・二宮清純との共著)では彼らの言葉遣いに苦言を呈していた。 衣笠江夏対談 なぜ最近の選手のヒーローインタビューはつまらないのだろう? みんな判で押したように「最高です」「明日も頑張ります」「応援、お願いします」と連呼するだけ。  こうした薄っぺらなコメントになるのは、<言葉の裏側に、何が付いているかを知らない>(p.192)からだと言う。  マラソンの有森裕子(51)の「自分で自分を褒めてあげたい」という名言もバッシングを受けた裏のストーリーがあるからこそ意味を持つフレーズなのだが、残念ながらいまの野球界からはそのような苦味を持つ言葉が失われてしまった。  言葉には、その人が感じてきたもの考えてきたものの蓄積が一瞬にしてあらわれる。衣笠氏は軽薄なヒーローインタビューに違和感を覚えていた理由だろう。

④音楽好きの原点はレイ・チャールズ

 訃報が報じられた際、衣笠氏の音楽マニアぶりを振り返る記事が多く配信された。ジャズ、リズム・アンド・ブルース、ロック、カントリーなどのオールディーズから、ビヨンセ、レディー・ガガ、ブルーノ・マーズ、グリーンデイなど最近のヒット曲もカバーする博識ぶりに驚きの声があがった。  その原点がレイ・チャールズだったという。彼が亡くなる前年に親友のカントリー歌手、ウィリー・ネルソンの70歳の誕生日を祝って「Song for you」という曲を歌ったことがある。その当時、すでに体調のすぐれなかったレイだが、最後の最後で目の覚めるようなパフォーマンスを披露したのだ。
 衣笠氏も、死の直前まで現場にいつづけた。ほとんど言葉にならないかすれ声になりながらも、明るく豪快に笑ってみせた。 <衣笠といえば、いつでも思い切りよくブルンブルンとバットを振り回し、たとえ、三振しても身体が倒れるくらい豪快にフルスイングの三振をする、それが衣笠じゃないか。>(『水は岩をも砕く』 p.124)  最後まで全人格を表現しようと力を尽くす姿は、身体をよじらせて高音を出そうとあがくあの日のレイ・チャールズと同じ気迫だったのではないだろうか。<TEXT/石黒隆之>
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