イケメンに貢いでも満たされない…私が普通のおじさんと結婚した理由
そんなある日、マスターの誕生日がやってきて……。
「いつもお世話になっているので、Tシャツをプレゼントしたんですよ。デブなのに、それを強調するようなボーダーのシャツばかり着ていたので少しでも引き締まって見えるように黒を選びました。今度はグッチじゃなくてGAPの安いヤツですけど」
するとマスターは、狂喜乱舞と言っても過言ではないほどキャッキャとはしゃぎ、「これから毎日このTシャツを着るね!」と森若さんに宣言したそうだ。
「そんなバカな、と信じてなかったんですけど。それから本当にいつ行っても私のあげたTシャツを着ているんですよ! 洗濯どうしてんの? って聞いたら、毎晩お風呂に入るときに首回りやスソが伸びないように、オシャレ着用洗剤で丁寧に手洗いしてるっていうんですよ(笑)。つい可愛いと思ってしまいました」
しばらくすると、マスターから「よかったら森若ちゃんと一緒に映画を観に行きたい」と誘われる。
「初めてマスターと昼間に会ったんですよ。映画観て、ご飯食べて、いっぱい喋って、笑って……あぁ、これがデートかって気づいたんです。ホストといくら話をしてもプレゼントをあげても……所詮、演技で喜んでるフリしてくれるだけで、虚しかったなぁとしみじみしちゃって」
その晩、ついに「僕とお付き合いしてくれませんか?」と告白された森若さん。
「私がOKすると、また信じられないぐらい喜んで(笑)。『本当に生まれてきてよかった……ありがとう、ありがとう!!』って握手を求められました。いや~、イケメンにしか興味がなかった私がこんなモサいおじさんと付き合うことになるなんて。何だか不思議な気分でした」
そのまま交際を続け、昨年2人は結婚したそうだ。
「料理や洗濯をしただけで、めちゃくちゃ褒めてくれるし、可愛がってくれる。一緒にいると、すごく安心できるんですよね。こんなに私をガッチリ受け止めて大事にしてくれる人は他にいないなって思いプロポーズを受けることにしたんです」
ぶっちゃけ、これまで彼にときめきを感じたことはないという。「でも、大好きなんですよ?」と笑う森若さんは、とても幸せそうだった。理想と現実は違う。たとえ理想のタイプとは違っていても、最高のパートナーを見つけられたのではないでしょうか?<取材・文・イラスト/鈴木詩子>漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
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