駅前の飲み屋はジモトへの入り口

駅前の飲み屋はジモトへの入り口
駅前のどこかの店に行けば、誰かが必ずいますから

<川口晃平さん(26歳・役者志望)>

 町内会に入って神輿を担ぐのは楽しそうだが、いささか気後れしてしまう人でもすぐにできる方法がある。駅前、気になるあの店の暖簾をくぐってみることだ。

「お店で初めての人と隣同士になっても、町の話題ですぐに盛り上がれますよ。『西荻住んで何年?』っていうやり取りから入って、『じゃあ、はつねのタンメン食べた?』とか、『坂本屋のカツ丼、ウマいよね!』とか。互いに『西荻、好きだよね』って告白し合って、最後は『西荻、サイコー!』って、そこにいる人たち全員で、街を称え合ったりして(笑)」

 こう話すのは、西荻窪をこよなく愛する川口晃平さん。駅前、間口一間ほどの小さな飲み屋が軒を連ねるこの界隈を毎日渡り歩く。

「どんなに疲れていても、気付くと、毎日2~3軒をハシゴしてる(笑)。わざわざ約束や連絡をしなくても、どこかの店に行けば、必ず、誰かがいますから」

 しかも、その関係は夜の西荻、お店の中だけにとどまらない。

「先日は行きつけのお店のひとつ『西荻串かつセンター穴熊』のマスターの結婚パーティーがあったんですけど、列席者150人のうち、半分以上が地元の人。主賓挨拶から司会、ビデオの制作も常連さんが全部仕切っていて、僕も余興でタバスコ入りビールの一気飲みをしちゃいました」

 ほかの店でも同様で、お客さんが所有する軽井沢の別荘でバーベキューをしたり、高尾山や富士山に登る会が開催されたり。

「僕がよく行く沖縄料理屋では、年に1度、バスを貸し切っての旅行が恒例なんですよ。総勢30人ほどで、草津や鬼怒川の温泉、遠いところでは、沖縄にも行ったかな。宿泊したホテルの宴会では、金髪のギャルの横に、80歳近いオジイサンが座ってたりして(笑)」

 もうずいぶん前のことだというが、西荻駅前に大手居酒屋チェーン店がオープンしたときのこと、川口さんらの通う店々では、お客さんたちが大ブーイング。「意地でも行かない」と誓いあったという。

「みんな、中央線の中でもマイナーなこの街が好きだから。どこにでもある風景が入ってくるのがイヤなんですよ」

 年齢や性別を超えて、飲み屋でも、旅先でも盛り上がれるのは、こうした「西荻が好き」という共通項があるから。

「あだ名だけで本名も知らなければ、何の仕事をしているのかもわからない人も多いですよ。いくら親しくなっても、お互いの家を行き来するようなことはありませんし。なんていうか、踏み込みすぎない適度な距離感もあるんですよ。それがまた楽で。ジャージにサンダル履きでOK。なんて言うのかな、寮の食堂みたいな感じなんですかね。仲間と楽しくメシ食って、自分の部屋に寝にいく……そんなノリかなあ」

 街が好き――見知らぬ同士が、杯を交し合う理由としては十分ではないか。街が好きであれば、盛り場からのジモトデビューのハードルは決して高くはないよう。

― 住んでる街の[ジモト化](近所の仲間づくり)計画【2】 ―

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