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川崎に住む一児のパパから見た「ルポ川崎」。ヤンキー公園、タワマン急増、殺人事件まで…

タワマン急増し、毎朝駅では圧死寸前の中原区

「中原区」は近年武蔵小杉駅の横須賀線・湘南新宿ライン用ホームがタワマンの急増などの影響で毎朝改札に長蛇の列ができることでニュースにもなったが、もう一方の南武線のホームも、子連れで土日の夕方に乗ろうとするとホームが人で溢れかえっているケースがある。南武線は用地の問題からどの駅もホームの長さを6両以上に延ばせないと聞くけど、今の時代に6両編成ゆえ、どの時間に乗っても混んでいることが多い。もう少しどうにかならないものかといつも思う。  「幸区」に息子を連れていくといえばJR川崎駅西口のラゾーナ川崎一辺倒。ここは主に父親である筆者が広場で行われるアイドルイベントを見たいがため。川崎駅は武蔵小杉駅とは逆に、最近新しい改札口が出来て構内の通路も広くなったので子連れでも乗り換えしやすくなった。

のどかな風景の中で、忘れることのできない『川崎市中1男子殺害事件』

『ルポ川崎』の主な舞台にもなった「川崎区」は、多摩区からだと今まで最も訪れる機会の少なかった地域だが、鉄道好きの息子が『タモリ倶楽部』で紹介された京急大師線・産業道路駅前の7車線横断踏切を「見たい」とたまに出向くようになった。駅の近くには〈ラウンドワンスタジアム 川崎大師店〉があり、普通のラウンドワンにはない大きな遊び場があるため、最近ではむしろこっちが目的になっている。ここまで行くのに登戸から約50分。南武線と京急大師線の乗り継ぎはまさに川崎横断列車旅である。大人目線で見ると産業道路駅周辺は排気ガスが立ち込め、殺風景な景色が広がるわけだが、息子はいずれこの風景を思い出す日が来るだろうか。  産業道路駅の次が小島新田駅。こじんまりとしたホームと駅舎の周りには町工場と小さな飲み屋が点在し、駅前にある跨線橋を上がると広大な貨物ヤードが見渡せる大師線の終点だ。ここから15分ほど歩くと多摩川沿いに殿町第2公園という最近整備された小ぎれいな公園があり、何度か雑誌のロケで訪れたことがある。多摩川の河口近くで陸、空とも気持ちよく開けており、対岸の羽田空港ではモノレールが行き交い、飛行機が次々と離着陸するわけだが、ここから川沿いに3キロちょっと歩いたあたりで「川崎市中1男子殺害事件」が起きているわけで、この明るい公園に行く度に無意識のうちにそっちの方角を眺めてしまう。  川崎在住8年。東京と横浜に挟まれた、これと言った特色のない町ではあるが、住んでみないとわからない面白さがある。何せひと口に川崎と言っても、7つの行政区があって151万人もの人が暮らしているのだ。特に市を団子の串のように貫くJR南武線を乗り通すと、畑が目立つ北部の稲田堤、中野島からターミナル駅・武蔵溝ノ口を境に高架線に移り、びっしり家が立ち並ぶ武蔵新城、武蔵中原を過ぎると超高層マンション街の武蔵小杉。その先は平間、矢向といった下町風情の街を通って川崎まで。30分ちょっとで味わえるコントラストすべてが「川崎」に集約されているのがよくわかるのではないだろうか。 「いろんな人がいて、いろんな生き方がある」  息子にこの価値観を教えるのに、川崎という街の持つ多様性は一番の教科書だと思っている。<取材・文・撮影/黒田創>
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