川崎に住む一児のパパから見た「ルポ川崎」。ヤンキー公園、タワマン急増、殺人事件まで…
「えっ、川崎って治安悪くないですか?」
筆者は8年前から川崎市多摩区に住み、もうすぐ6歳になる息子と妻、犬一匹と一緒に暮らしている。川崎に住んでいると言うと、怪訝な反応をされることがある。
その人に特に他意はないのだろう。数年前には「川崎市中1男子殺害事件」のような事件もあったし、そうした事柄を通じて「川崎」の地域性を描いた磯部涼さんのドキュメンタリー本『ルポ川崎』(サイゾー刊)も話題になった。
筆者もライターの端くれとして、川崎市在住のひとりとして『ルポ川崎』はWEB連載時から更新を楽しみにしていたが、同書で描かれる舞台の多くが川崎区、幸区の市南東部(南部と呼ばれる)であることでもわかる通り、そこから北西に細長く伸びる川崎市は中心部から離れるほどに雰囲気がかなり変わってくる。今回は筆者自身、一児の父からみた、ルポ川崎をお届けする。
まずは「多摩区」。我が家はそれまで横浜など東急沿線で何度か引っ越してきたが、縁もゆかりもないこの地に引っ越したのは都心から近いわりに家のすぐ裏に森が広がるなど緑が多いのが一番の理由だ。何せ多摩区内は梨畑がやたらと多く、8月後半~9月下旬になると府中街道沿いを中心に梨の直売所が立ち並ぶほどのどかな土地だ。
だから人に家の場所を聞かれると単に「川崎」ではなく「川崎の多摩、田舎のほうだよ」とつい答えてしまう。位置的には東京都稲城市、狛江市、調布市と隣り合わせにあり、中心駅の登戸からは10分おきに来る小田急の快速急行で新宿まで17分くらい、各駅停車中心のJR南武線で川崎まで27~30分。小田急線でつながる新宿のほうが距離的にも心理的にも近く、それは隣の麻生区も同様だろう。
しかし、いざ多摩区に住んでみて想定外だったのは騒音。あくまで地域限定的な話かもしれないが、家の周りに区内の大学に通う学生向けアパートがやたらと多く、新歓や文化祭の時期になると毎日のようにどこかの部屋に学生が集まって「ああ、またこの季節か……」と筆者と妻の気分を憂鬱にさせる。
部屋で飲むならまだしも夜中にドアをバターン!と開けるわ、アパートの廊下や路上に出てくっちゃべるわ、奇声を上げるわ、挙句の果てに我が家の擁壁にゲロを吐くわ……。多少なら目を瞑るが、息子が生まれたばかりの頃は本気で寝かしつけに困って警察に通報したことも一度や二度じゃない。さすがに警察が来ると静かになるとはいえ、アパートの入居者は4年周期で入れ替わる。すると、また同じような輩が引っ越してきてしまうから厄介なのだ。ちなみに、新歓や文化祭の時期は向ヶ丘遊園駅南口で毎晩その何倍もの規模の「厄介な大学生サークル飲み」の光景が大量のゲロと共に繰り広げられ、改札を出た人たちは眉をひそめつつ家路を急ぐ。
続いては「宮前区」。子供と一緒に東急田園都市線の宮崎台駅そばにある、東急が運営する〈電車とバスの博物館〉に行くと田園都市線沿線ならではの整った街並みと、東急ブランドの浸透ぶりにいつも感心してしまう。それは隣の宮前平も鷺沼も同様で、駅前に大手学習塾が目立つのも共通点。あらゆる点でスキを見せない街なのである。これがひと駅都心側にある梶ヶ谷駅周辺はもう少しくだけた雰囲気になり、その手前の溝の口駅は田園都市線沿線随一の歓楽街で昭和のまんまの激シブ飲み屋街も健在。この両駅は「高津区」に存在する。
『ルポ川崎』に川崎南北抗争の舞台として名前が挙がった橘公園も、この高津区内。ここはそんな血なまぐさい話がウソのように大小さまざまな遊具が揃い、駐車場まであることから土日の暇つぶしスポットとして人気が高いのだが、以前筆者と息子が訪れた時は絵に描いたようなヤンキー仕様の親子連れが数組いて、子供が遊具の順番待ちに割り込んだり、砂場で他の子の遊び道具を取り上げたりしても注意せずスマホをいじっていて閉口した記憶がある……。遊ばせづらい。
奇声をあげて吐瀉物を撒き散らす若者……通報は日常沙汰

学習塾・激渋飲み屋・ヤンキー公園が同居する宮前区

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